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ピアノ協奏曲第6番について
3月12日の紀尾井ホールの演奏会チラシです。


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このコンサートは、打楽器奏者とピアニストが中心になるという珍しい企画で、さらにビッグバンドのオーケストラが加わるというコンサートです。
今回のこのメンバーによって、カプースチンの作品からまだ日本で演奏されていない2曲、『2台のピアノと打楽器による協奏曲Op.104』と『ピアノ協奏曲第6番Op.74』の演奏が実現します。私はピアノ協奏曲第6番のソロを担当しますが、このコンチェルトが3月の紀尾井ホールで世界初演となります。この曲はカプースチンによって作曲されてもう20年近くも経ちますが、まだ誰にも演奏されていないのです。

作曲者本人から聞いたところによれば、この曲はあるオーケストラのために作曲したのですが、作品が完成した時すでにそのオーケストラは解散してしまっていたようで、その後、今日に至るまで誰にも演奏されることがないという運命を辿ったそうです。
この曲の演奏に必要なオーケストラ(=ビッグバンド)は、全員で16人が指示されており、少なめの編成ですが、スコアを見ると2本のアルトサックス奏者は曲の途中でそれぞれフルートとクラリネットに持ち替えるという指示があります。また、ベースギター奏者はコントラバス奏者にもなります。持ち替えができる奏者を想定して書かれたようですが、実際にはそれぞれ二人の奏者を立てなければ演奏できないのではないかと思います。ロシア人はそんなに器用なのかなと思いましたが、聞くところによれば、スタジオミュージシャンの中にはそのように木管楽器の持ち替えができる奏者もいるようです。

このピアノ協奏曲第6番を少し紹介してみましょう。
新曲を演奏する際は、はっきり言って頼るものは楽譜しかなく、これを解読するという作業は世界初演の場合は極めて困難な仕事になる場合があります。今回もそれをひしひしと感じます。楽譜を読む限り、すでに素晴らしい音楽であることははっきり分かりましたが、オケ合わせはけっこう大変かもしれません。音楽作りにも意外に時間がかかるかもしれません。ちなみに、今回このカプースチンの6番初演の指揮を買って出てくれたのは曽我大介さんで、実力派と思いますのでかなり楽しみにしています。他の管楽器や打楽器奏者たちも今回は選りすぐりのメンバーですので、これに関しては本当に楽しみです。

さて、この曲は3楽章からなりますが、編成の特徴としては、これは他のカプースチンのコンチェルトでも同様のものが見られますが、ピアノをソロとして、オケは管楽器中心のビッグバンド、それにドラムセットやギター、ベースギターが加わります。コンチェルトの中でドラムとピアノを合わせるというのはとても難しいもので、クラシックの演奏家にはあまり馴染みのない感覚です。
例えば、第1楽章では部分的にピアノ・ドラム・ベースギターの3人で演奏する、まさにジャズのピアノトリオのような部分があって、かなりエキサイティングです。
また、スコアを見て唖然としたのは、リズムのかなり複雑なところがあります。つまり、オケとピアノが4分の3拍子(実質は8分の9拍子)の部分で同時にドラムが2分の2拍子で8ビートを刻む(8分の8拍子)ところがあって、つまり1小節に付きアクセントが当然8分音符1拍ずつずれていくわけです。しかも、それが規則的に続いていくならまだしも、途中に4分の2拍子がランダムに挟まれていたりしてさらにズレるので、頭がゴチャゴチャになりそうです。しかもテンポは快速。音楽的には楽しい雰囲気のところなので、難しさを感じさせずに合わせなければなりません。ドラムの8ビートを聴くとピアノが弾けなくなりそうだし、聴かないで弾くわけにもいかないという、一種独特のリズム感覚を持ち合わせていなければいけません。しかも、自分が演奏する8分の9拍子の中にも一筋縄ではいかない複雑なリズムが毎小節にごとに含まれているのです。
こう書いてもさっぱりわかりませんね…。今のところ、これは人間には演奏不可能ではないかと思えます。

しかし、この曲は素晴らしい作品です!(まだ実際に音に出したわけではありませんが。)
とにかく、今回は世界初演ということの重みと責任をいつになく感じているところです。こんな贅沢な企画はあまりできないと思いますので、必ず良い演奏会にしたいと思います!
皆様の応援をぜひよろしくお願いいたします。

| カプースチン |
| 09:07 PM | comments (x) | trackback (x) |

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新・ピアノ弾きの休憩室 /ピアニスト川上昌裕のブログ。音楽の話題、ピアノ学習へのヒント、日常生活の舞台裏を気まぐれに綴る。