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モスクワ音楽院付属中央音楽学校のこと

最近、ある近しいピアノの先生からモスクワへピアノ教育に関する取材に行きたいということで相談を受けた際に「モスクワ音楽院付属中央音楽学校」のことが話題になったので、この機会に少し書きたいと思います。

最近はカプースチンに関する修士論文を書く学生も増えてきて、先日の伊藤楽器で行なった公開講座の時にはカプースチンの熱狂的なファンを自称する伊石有里さんも関西から駆けつけてくれて、彼女が書いたばかりの論文も頂きました。多くの修士論文をこれまで見てきましたが、なかなか良く書けていて感動しました。ただ、カプースチンに関する日本語の文献がまだ少なすぎることからくる苦労と努力の跡は見られました。でもかなり多く参考文献や情報を手に入れていて頑張られたのだなーと感じました。
伊石さんの論文では、一部どうしても原典に当たれない部分は2006年に初めてカプースチンについて書かれた芸大の斎藤君の論文等から孫引きするしかなかったものもあるかと思いますが、特にカプースチンがモスクワ音楽院に入る前にアフレリアン・ルッバーフ先生についてピアノを勉強した音楽高校について、私はこの学校の日本語の正式名称は「モスクワ音楽院付属高等音楽学校」(あるいは「~音楽高等学校」)とするのが良いのではないかと思います。ちなみに、この学校は「モスクワ音楽院付属~」という名を冠する2つの学校うちの1つですが、上記の「中央音楽学校」とは違うほうです。

これら「モスクワ音楽院付属~」という名を冠する2つの学校の名称は、実はロシア語ではまったく違った名称で、それぞれ書くと次のようになります。①が中央音楽学校、②がカプースチンの通っていたほうの学校です。

①Центральная музыкальная школа при Московской консерватории
②Академическое музыкальное училище при Московской консерватории

皆さんロシア語が読めますでしょうか。(笑)
本来は、「モスクワ音楽院」に付く正しくてもっと長い形容詞があるのですが(外国の音大は正式名称がやたら長いのが多い)、一応これが正式な学校の名称です。後半には「モスクワ音楽院付属~」とまったく同じ語が使われているものの、前半を見ると、①は通常の「学校」という語школаが使われており、②のほうは、やはり学校ですが中等教育を行なう学校という語のучилищеです。

歴史は②のほうが古いのですが、一般的には①の中央音楽学校(頭文字をとってцмш(ツェー・エム・シャー)と呼ばれる)のほうが有名かもしれません。そして①は多くの日本語の本の中で「児童音楽学校」と書かれることもあります。というのは、この学校は7~8歳から入って音楽の高度な教育を教わる10年制で、しかも音楽以外の一般教科も学ぶので、初等教育と言っていいのか中等教育と言っていいのかわからないからでしょう。もちろんどちらも含むわけで、この学校からモスクワ音楽院へエリートたちの教育は続いていくわけです。
この①中央音楽学校は、あのゴリデンヴェイゼル(晩年はモスクワ音楽院でカプースチンの先生でもありました)の主導で1932年に設立された学校です。(「中央音楽学校」という名前になったのは1935年。)当初はネイガウスやイグムノフなどモスクワ音楽院の名教授たちが一緒に協力する形で始まり、この中央音楽学校がモデルになって、その後ソビエト全土に24校の「特別音楽学校」が設立されていったということです。カプースチンが生まれた1937年にはレニングラード(サンクト・ペテルブルク)に次ぐ3校目としてウクライナのキエフにもすでに存在していたようで、ロシア(ソビエト)の音楽教育はこの頃からものすごく専門性が高かったことがわかります。実際このようなシステムの中で、多くの音楽家たちは育ってきたと言えます。

もともとはモスクワ音楽院が存在したわけで、ある時、「やはりもっと低年齢から音楽の専門教育を施す学校が必要だろう」ということで下へ降ろされてきたという経緯です。これ自体は、日本での音楽大学に付属高校などが存在するのとある部分似てはいます。
また、モスクワではグネーシン記念ロシア音楽アカデミーも有名です。このグネーシンの付属音楽学校もあります。今年は我が東京音大にもグネーシン・アカデミーのトロップ教授がまた来られるようですし、エリソ・ヴィルサラーゼなども来られる予定で、ロシアの現役教授陣は広く健在です。ピアノを勉強している人たちにとっては、偉大な作曲家たちとその膨大なレパートリーの重要性を考えると、ロシアはまだまだ勉強しなければいけない未知の宝庫のように思います。

ロシアに関しては今でもまだ日本語の文献が十分存在するとは言えないし、英語の文献を読んでも結局ロシア語の知識がなければはっきりわからないことが山ほどあるので、今後の好奇心旺盛な学生たちや研究者たちの活躍に期待がかかるところです。

雑記 : 10:22 : comments (x) : trackback (x)
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