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カプースチン独特の運指

新刊楽譜に入っている指使いはすべてカプースチン本人によるものですが、一般的な日本人の手の大きさでほとんどそのまま通用します。というよりも、すべてがかなり理想的な指使いですし、感心させられる箇所がたくさん発見できると思います。
プレリュード第24番の第147小節には、左手に“5231”という指使いが見られます。ここは“5321”の方が普通に見えるので、やはり念のために本当にそう弾くのかどうかを作曲者に問い合わせました。意外にも、「それで合っているよ。でも私だけかもしれない」という回答でしたので、珍しい運指ですがそのまま載せることにしました。“52”を弾いたあと素早くポジションを移動して“31”を持ってくるという弾き方ですが、これと似た運指は他の曲にもいくつか見られるもので、カプースチンの奏法と音色の秘密を解く鍵を含んでいると思います。


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音楽雑誌にカプースチン関連記事

「音楽現代」12月号に、特別企画~ニコライ・カプースチンが掲載されました。以下のページです。
カプースチン―新刊楽譜の特徴 川上昌裕…p.114
カプースチン―その自作自演録音をリリースしてきて 鮫島奈津子…p.116
それぞれの立場からの裏話も豊富に盛り込まれています。


カプースチン : 19:54 : comments (x) : trackback (x)
新版で改訂された箇所について ~おもに、「24のプレリュード 作品53」~

新版では多くの誤植が訂正されたことはもちろんですが、今回の楽譜の編集中、カプースチン自身が楽譜の中にもっと論理的に書き直したい箇所があると主張され、浄書の原稿に校正箇所を含み1000箇所以上の“赤”が入って返ってきました。具体的には、スタッカート付きの4分音符を8分音符にしたり、音符の棒のつけ方を変えたり、アクセント記号を追加したり、スウィングを正しいリズムで表記するなど、誤解を生まないための細かい配慮からくる訂正が多かったと思います。しかし、それらの変更によって耳で聴いてわかるほどの変化はほとんど感じさせません。

24のプレリュードの第11番と第23番では音がいくつか書き変えられました。これらの箇所については楽譜の解説で注釈しておきました。第11番のラストの部分では、右手が音域を1オクターヴ分多く上がっていくOssiaが追加されましたが、この新ヴァージョンでこのエンディングを弾いている本人の映像を池袋ヤマハ(2F)で現在流されているDVDで目撃することができます。今回の改訂ですが、どういう心境の変化でこれらの変更の必要性を感じたのかについては詳しくは分かっていません。


カプースチン : 19:53 : comments (x) : trackback (x)
作曲家自身の演奏と楽譜との相違について ~ピアノ曲集「8つのエチュード 作品40」と「24のプレリュード 作品53」~

このたび全音楽譜出版社から刊行された2冊の楽譜(以下“新版”)では、旧ロシア版に多く見られた誤植は訂正され、作曲家自身によって他の部分にも細かく手が入れられました。
この新版で大幅な改訂がなされましたが、この11月にも再リリースされる作曲家本人の録音と楽譜に書かれた音がまだ違っているという部分を発見される方もいらっしゃるかと思います。その例として、下の2点を挙げておきます。これは、楽譜の解説には書かれていないことですので、特に熱心な奏者の方のためにここで説明しておきたいと思います。

1. 「8つの演奏会用エチュード」 第2番「夢」より
第132小節の右手の分散和音は、3、6、12拍目がEs音であるにもかかわらず作曲者自身はすべて同じ音(すなわちFes)で弾いています。アムランの録音においても、おそらく作曲家自身の録音に影響を受けたのかもしれませんが、やはり楽譜通りに弾いていない(しかしなぜか12拍目だけはEs音)ためさらに混乱してしまいます。カプースチン自身はすべてを承知している上で、楽譜が正しいとしています。

2. 「24のプレリュード」 第12番より
第93~94小節の右手と左手間の音域は、オクターヴと6度が交互に奏されるように書いてありますが、作曲者自身はここのパッセージをすべてオクターヴのユニゾンで弾いています。これについても問い合わせたところ、すぐに自身が所持している3枚のCDを聴いてこの部分について点検してくださいました。結果は、唯一オズボーンのみが正しく弾いていて、自分ともう1人のオランダの女性ピアニストはなんとユニゾンで弾いているではないか!とびっくりされていました。もちろん、楽譜が正しいということです。

このように、作曲者自身の自作自演の録音に楽譜とは違う音やリズムが出現するというケースはままあります。あくまでも楽譜の方を重んじるという姿勢が大切です。


カプースチン : 19:51 : comments (x) : trackback (x)
指はどこまで動くようになるか(2)

「強い指を作る」という話の続きですが、生まれつき指が強いという人も稀にはいるかもしれません。欧米やロシアのピアニストなどは、手も大きいですし体格も違いますから我々が考えるほどの“筋トレ”はひょっとしたら必要ないかもしれません。音楽的な素養があり、「こう弾きたい!」という音楽的感性が強い人は、稀にあまり練習しなくとも弾けてしまう人もおります。これは、その人の才能が強く作用するわけですが、音楽的欲求が強い人は、確かに指が早く動くようになる傾向があります。しかし、一般的にはやはり強い指を意図的に作っていくことを考えなければならないでしょう。みな、今の自分の実力で弾ける曲よりもさらに難しい曲に挑戦したいはずです。

そこで、「練習曲をどう使って」正しい筋力をつけていくかということが問題になってくるかと思います。ただハノンを機械的にがむしゃらに弾くというだけではダメです。例えば、手の小さい人はあまりオクターヴ等の練習をやりすぎると腱鞘炎になってしまう可能性がありますし、手の大きい人でも無理な練習を続けると手を壊してしまいます。痛みは、指のほかに腕や背中までくることがありますから気をつけなければなりません。自分の手に合った練習方法を見つけることが大事でしょう。注意点としては、あまり指を開きすぎるパッセージを続けるのは危険です。それから、いつも指や腕に力を入れすぎて弾き続けるというのも危険です。その2点に気をつけながら、指のためのあらゆる練習曲を長時間やるのは大丈夫だと思います。ある程度であれば、「腕や指が疲れる」という現象は普通のことですし、疲れもしないようなら何の筋力も体力もついていないと言えます。例えばハノンの中から自分に適していると思うものをきちんと選んで、毎日同じものを一定期間続けると、筋力が1日ごとについてくるのが実感できるでしょう。つまり、疲れる度合いが減ってきて持続力がついてくるわけです。

チェルニーだって、日本ではあまり正しく理解されていませんが、あの練習曲は本当はヴィルトゥオーゾを目指すもので、本来ものすごく速いテンポで弾くものです。しかも、速く弾くとかなり手が疲れるし、普通はそこまで手が持ちません。正しく弾くためには、実はそれほど高いレヴェルが求められているのであって、テンポで弾き通すとハノンと同じだけ疲れる曲がいくらでもあります。 しかし、やはり指を作るならハノンがわかりやすいと思います。
 ハノン60番練習曲をおおざっぱに2つに分けると、1~40番までは、「“5本の指”を中心とする筋力を」つけるため、41~60番までは、「特に“1と5の指”と“腕の筋力”を含めた総合的体力」をつけるためと考えて、両方からバランスよく選んで毎日続けると自分の手の状態が常に把握できるようになっていくと思います。なぜここまで指を作ることにこだわるかと言うと、それによって演奏に余裕を持つことができるからです。テクニックの余裕が、心の余裕につながり、音楽的インスピレーションを受けるだけの余裕が生まれるのです。

ハノンではなく例えばショパンのエチュードを使うというピアニストがいても良いと思いますが、本格的にピアノをやりたいという人で、このような練習を毎日続けることができない人は、おそらく一定の壁を超えることができないと思います。こんな大変なことをずっと続けていくなんて、一般的に考えたらきっと“異常”な生活に見えることでしょうが、周囲の理解と自分自身の強い意志があればまったく不可能なことではないでしょう。



ピアノ練習のヒント : 18:54 : comments (x) : trackback (x)
指はどこまで動くようになるか(1)

ピアノを弾く上で、「指がよく回る」ことは絶対に必要になってきます。もちろん、回りすぎて滑ってしまうのはいけませんが、良い意味で「ちゃんと指が動く」ためにはどうしたら良いのかを考えてみたいと思います。きっと、多くの人は自分の指が思うように動かなくて苦労しているはずだからです。実は、指が動かない理由は、何度も言いますが、「指が弱い」からなのです。強い指を持っていれば、誰でも速く動かすことができるのです。速く的確に動く指を持っていれば、コントロールもよく効くので、自分の思った通りの音が出せるようになります。弱い指では、音が勝手に飛び出したり抜けてしまったりして言うことを聞いてくれません。

この「強い指」を作るために、一定の量の練習時間が必要なわけなのです。小さい頃からピアノを続けている人は、手や指の筋肉がだんだんピアノを弾くのにふさわしくなってくるため有利ではありますが、ハノンなどの意図的な練習曲をまったく使わずに指が理想的に鍛えられるパターンは、次の場合以外にはあり得ないでしょう。すなわち、「無理のない正しい弾き方」ができていて、なおかつ「毎日5~6時間は真剣に練習している」という人です。1日に平均5~6時間も弾いていれば、それだけで筋肉は発達するでしょうから、練習曲は必要のない人もいるかと思います。しかしその場合は、自主的に良い弾き方を常に求めていなければなりません。

ハノンを1冊通すことができるだけの筋肉は、普通にピアノを弾く程度の人にはないはずです。大変なエネルギーが必要だからです。では、それほどの筋肉が必要なのかというと、素晴らしい演奏ができるためにはあった方が良いでしょう。簡単な曲だったらとても音楽的に弾けたけれども、だんだん難しい曲(例えばショパンとか)になってくると、思うように弾けなくなってくるということがあります。難しいパッセージが突然出てきて、どれほど練習しても思うように弾けない。そのフレーズに必要なスピードが出ないし、指のコントロールが全然効かない、ということがあると思います。これは、単純に「指が弱い」ためなのです。そして、もっと難しい曲はもっと弾けないだろうとあきらめてしまいます。これは、自分のテクニックの限界として片づけてしまいますが、実は自分の手(筋肉の発達具合)の限界なのです。そして、これは誰でもちゃんと鍛えれば上達していくのです。

ピアニストやヴァイオリニストは3日も練習を休めばただの人になるとよく言われますが、それはこのことを言っているのです。スポーツのトレーニングと同じで、弾かないとすぐに筋肉が衰えてしまうためで、これはどうしようもないのです。だから、いつ何時もよく動く指を保つためには、毎日の練習が欠かせないのです。そして、この練習を毎日続けているということは、手と腕ももちろん鍛えられていきますが、同時にものすごい体力がついていきます。指揮者の体力ほどではないでしょうが、ピアニストの体力も、普通の生活をしていて得られるレヴェルと比べればかなりすごいはずです。



ピアノ練習のヒント : 20:54 : comments (x) : trackback (x)
ペダリングについて(2)

ペダリングは、演奏者によっても意見が分かれる場合があります。例えば、あまりペダルを使わなくても弾けるという意味から、モーツァルトの曲は小さい子に好んで取り上げられます。これを良いと考えるか、それとも仕方がないと考えるか。「モーツァルトは難しい」ということは、一般的に知られているところです。音楽的感性を身につけることを考えると、本当はモーツァルトだってある程度の年齢になってテクニックがついてきたら私は早めにペダルの可能性を探り始めた方が良いと思うのです。もちろん、最近は子供に早い段階でペダルを使わせる先生が少しずつ多くなってきました。以前は、「下手にペダルを使う」生徒は、コンクールなどでは不評を買ってしまうことが多かったのです。ペダルを使わない方が「端正な演奏」として好まれる傾向にありました。ところが、時代(たぶんトレンドなのでしょう)が変わり、今では高性能な「ペダル付き足台」が国内にたくさん普及しているのを見てもわかるように、小学生でも皆うまくペダルを使うことができるのです。だから、子供のためのコンクールでは、もう同じ曲ならペダルを使った方がうまく聞こえてしまうし、大人っぽい演奏として評価される傾向にあります。(この感覚は、今でこそ普通になりましたが、少し前までは本当にまったく逆だったのです!)

ウィーンの伝統的な奏法では、モーツァルトのピアノ曲の演奏には(ハイドンやシューベルトも同じですが)ペダルを多く使うのを好みます。メロディーの“良い響き”は、はっきり言ってペダルを伴った響きからしか得られないということがあります。まったくペダルを使わずに、よく通る美しい音を出すには限界があります。例えば、KV545の有名なハ長調のソナタの冒頭。この曲は、比較的初期に勉強する人が多いので、ペダルの技術があまりない段階でやってしまうことが多いでしょう。この曲の冒頭、右手のメロディーの「ドー」を歌うのにあなたはペダルを使いますか?(左手のドソミソ1回分です) 本来は当然使うべきでしょう。ピアニストは無意識にペダルを踏んだり離したりしてきれいに一つのメロディーラインを歌い上げるはずです。しかし、おそらく子供はこの場合は使わないでしょうし、先生もメロディーの音色という観点からペダルを駆使させて弾かせるという発想はあまりないでしょう。ペダルなしでも一応弾けてしまうのですから。

一度面白い光景を見ました。外国(ウィーン)の先生による公開レッスンでのことです。ペダルを使わずにモーツァルトを弾く子供の前で、その先生が模範として素晴らしい音を出して見せたのですが、実はその音色を出すためにペダルを踏んでいました。「これはちょっとずるいのはないか?」と私は思いましたが、その子供はいくらタッチを真似してもそれと同じ音色を出すことはできませんでした。

…種を明かせば、私が上の文章で「子供」と書いたのは、なんと「大学生」のことなのです! それほど、ペダルというのは盲点になっているわけなのです。



ピアノ練習のヒント : 23:55 : comments (x) : trackback (x)
ペダリングについて(1)

楽譜の「指使い」を重要視すべきだと言いましたが、それに対して、楽譜に書いてある「ペダリング」はどうかと言えば、これはほとんど使いものにならないと考えて良いでしょう。ペダリングというものは、本来楽譜に書けるものではないと考えるべきです。これを取り違えている人もけっこう多いのです。ペダルの記号はあるにはありますが、ペダルを「離してまた踏む」タイミングはとても微妙なもので、次の音を弾いてから踏み変えるのか、弾く直前でペダルを上げるのか、くらいの違いは書き分けることはできても、もっと微妙なタイミングについてや、ペダルの深さ(これがけっこう大切)に関してはとても書けるものではありません。ましてや、ペダルのもっと速い操作や微妙な技術、またソフトペダルやソステヌートペダルに関してはほとんど何も役に立ちません。だから、楽譜を正しく読むのは大切ですが、ペダルの記号に関してはだいたいのことしか分からないのだとあきらめる必要があります。ペダルがとても重要な位置を占める作曲家、例えばドビュッシーやラヴェルの楽譜にはペダルの記号など書いてないのです。どうしても指示が必要な箇所(“ここからは踏みっぱなし”…とか)には作曲家による指示がありますが、細かい踏み替えの記号などありません。しかし、例えばショパンのワルツ集には、パデレフスキ版などにもペダルの記号が書いてあったりして困ってしまうのです。ワルツの3拍目でペダルを離す記号があったりして、これを忠実に守る生徒がいたりするのですから、上に書いたように「使えない」と考えるしかないと思います。3拍目でペダルを上げたら大変なことになってしまいます。そんなふうに弾いているピアニストは実際一人もいないのですから。

国内版の楽譜には、よく丁寧にペダルの指示が書いてあります。まったく初めて使う人にとってはあるいは必要かもしれませんが、いったんコツをつかんでしまえばもう自分の耳で判断できることですから、ペダルの指示を指使いと同列で考えてはいけないのです。ペダルの使い方は、先生にチェックをしてもらったり、自分の耳をもっと信じてきれいに踏み分ける技を先に身につけることが大切です。しかし、これは一度練習したらすぐに身に付くものではなく、常にいろいろ試したりしながら曲とともに一段ずつ技術が上がっていくものですから、いつも意識して練習することが大切です。そうしていくうちに、次第にセンスの良い耳になっていくし、ペダルの技術もついていくことでしょう。

さて、実際に曲でどのようにペダルを使うかという話ですが、バッハを弾く際には、レガートのためにペダルを踏むことが絶対に必要になります(指が片手に6本ずつくらいあれば“絶対“とは言いません)。当然ペダルの記号はないので、奏者の判断によって使います。私の感覚では、バッハのペダルは早い人では中学生(小学生)から使わせてもまったく大丈夫だと思います。一般的に言っても高校生くらいなら全員がトライすべきでしょう。最初はみな下手なものですが、恐がってペダルを使わなければ正しいペダルの使い方をマスターするのにさらに時間がかかってしまいます。“指だけ”でレガートで弾くのももちろん大切な練習ですが、結局、ペダリングも“ピアノ歴”と同じことで、これも長くやっている人の方が早く熟練していくのです。ペダリングというものは奥が深いので、習得に何年もかかる技の一つといえるでしょう。



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