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「音楽とキャリア」

先日の話題とも絡みますが、最近読んでいた本の中から1冊紹介します。
音楽の道に進もうと思っている人にはぜひともお勧めしたい著書です。



今年8月に発刊された「音楽とキャリア」(久保田慶一著)というタイトルの本ですが、音楽関係者にはおそらく非常に共感できる内容で、音大生たちの参考にはおおいになるでしょう。「キャリアをデザインする」という観点から音楽の仕事を考えると、現実を冷静に正しく見なくてはいけません。学生のうちにはまだよくわからない部分についても詳しく書かれていて感動しました。これは非常に勉強になることでしょう。音楽と関わりつつ自分の将来を考えている人にとっては、一度は読んでおかなくてはいけない本だと思います。

例えば、「プロになるためには」「職業を選択するということ」「生涯学習としての音楽」…など、興味深いテーマについて客観的な事実に基づいて語られ、音楽に関わるさまざまな仕事について多方面からアプローチして、具体的にいろいろ考える材料が提供されていると言えるでしょう。

また、音大で学ぶ音楽に言及しているところで、先日ブログで紹介した東京音大のACTプロジェクト等についても書かれていたり、第3部の音楽に携わる職業のところで大きく紹介されている数人の中に、私がカプースチンのCD録音でお世話になったレコーディング・ディレクター坂元勇仁氏が取り上げられていたのも、偶然とはいえ私には嬉しいサプライズでした。

音楽に関する仕事全般や、音楽教育についても深く考えさせられる非常に良い本だと思いました。

雑記 : 19:30 : comments (x) : trackback (x)
卒試と演奏家の将来

うちの音大は卒業実技試験の最中です。
審査委員の私たちの仕事は、朝から夕方まで椅子に座ってじっと演奏を聴く毎日ですが、アクティブに活動している時よりもなぜかエネルギーを放出しているようで、家に帰ってくる頃にはこちらもクタクタになっています。

さて、連日審査を御一緒している先生方と学食で昼食休憩の時に話をしたりするのですが、昨日は面白い話になりました。
非常にレベルの高いピアノ科の学生たちについて話していたのですが、ピアニストでもあられる大先生(失礼!誰かわかってしまうかな)がおもむろに言葉を吐きました。「30年後には、現在やっているようなクラシック音楽の演奏会はなくなっていると思うよ」と。その先生の口から出てくる言葉としては衝撃的ではありましたが、その意味をよく訊くと、もちろんモーツァルトやベートーヴェンが30年後になくなっているわけではないが、いま普通にやっているような演奏会、つまりクラシックピアニストが過去の音楽をただ楽譜どおりに演奏してお客さんがたくさん集まるというような演奏会はもうなくなっていくだろうということ。きっと違った形態に変わっていくだろうと。
私も確かにその通りになるだろうと感じます。

しかしその言葉をその大先生から聞いたのは印象的でした。私自身も常々思っていたようなことではあったのですが、現実に第一線で演奏されながら、すでに何らかの兆候を感じておられるということなのでしょうか。ただ、30年というのは一応まだ長い時間ではありますが…。
このことは、たとえば難曲を素晴らしく弾きこなすトップ級の器楽科の学生が卒業したとして、これまで通りの形態では演奏家としてはやっていけない、つまり仕事にならなくなっていくというわけです。では、今後の演奏家はどうあるべきなのか。

音楽自体のあり方が今とは変わっていく可能性はあるでしょうから、まず常に新しいものにはアンテナを張っていく必要があるでしょう。数十年後には、クラシック音楽の演奏家は「古典」をやっているという意味で、きっと特別な意味合いを持った位置づけになっていくのでしょうが、それにしてもそこに何らかの付加価値が付かなくては仕事としては成り立たなくなるのは目に見えています。聴きたい音楽は、もう今では生演奏以外に聴く方法はいくらでもあるわけですし、その傾向はおそらくもっと強くなっていくことでしょうから。

今現在、もう付加価値を持った仕事を意識していくことは不可欠でしょう。単に人よりも上手く演奏できるというだけでは人々のニーズを満たせないというわけです。純粋に音楽に感動してほしいと思う気持ちに嘘はありませんが、今の時代どんな仕事にも付加価値というものは大切です。商品として売っていくという意味では他のものと同じで、職業として成り立たなければ音楽家は存在できないことになってしまうわけですから。
そのための勉強ということを考えると、学生時代からそういう意識を持って専門技術はもちろんのこと、専門以外のことにも興味を持ったりして多面的な実力をつけておかないと将来仕事ができる人にはなれないだろうな、と思ってしまいました。

雑記 : 19:11 : comments (x) : trackback (x)

先日大阪で行なわれたいずみシンフォニエッタによるカプースチン作曲「11人のための協奏曲」Op.90の初演が、本日夜6時からのNHK-FM放送(→番組表)で流れるようです。

楽しみですね。

カプースチン : 10:10 : comments (x) : trackback (x)
本番力について(2)

家で弾いている時はうまく弾けるのに、本番では全然弾けなくなってしまう理由は確かにいくつかあります。
ホールでは、いつもとは違う照明の明るさや会場の雰囲気、ピアノも違う機種、そして普段とは違う響きに戸惑います。また、タッチはコンサートグランドは鍵盤の戻りが遅く、重たい感じがします。実際その通りです。フルコンのタッチは、オーケストラを指揮しているような感じというか、自分の指の速さに鍵盤がついてこない感じがします。これに慣れることも必要です。

それから、緊張のあまり、手が氷のように冷たくなってしまう、あるいは、普段出ないほどの汗が吹き出してくる人。弾いている時に、普段はまったくそんなことはないのに、本番になると手の平から無限とも思える汗が流れ出す人や、異常なほど額に汗をかく人もいるでしょう。そういえば、ラン・ランというピアニストがいますが、彼はまるでスポーツのようにピアノを弾くのですが、身体も汗にまみれています。テレビで見ていると、汗が飛び散っていて、あれでは鍵盤の上はほとんど水浸しでしょう。「それでも弾ける」という自信がきっとあるのだと思います。普通はそんなに汗をかいたら鍵盤がすべってしまってまともに弾けなくなります。例えば管楽器だったら、詰まった唾液を時々出さなくては音自体がならなくなってしまうということがありますが、ピアノは少なくともそういうことはない。どんな状況でも弾けるという訓練をやっているのだと思います。ただ、繊細な表現はその際少しばかりは捨てなくてはいけないこともあるでしょうが…。
手だって、本番で凍り付いてしまうという人は、普段から冷たい手でもこのくらいまでは弾ける、というのをやっておくと良いと思います。

だいたい本番などというものは、完璧な環境でやれることなどないと思うべきで、最悪でもここまではできる、というのを自分なりにいろんなシチュエーションとして知っておくこと、それを自信として持っておくことが大切です。
例えば、ある外国の音大では、椅子の高さが変えられないような椅子でレッスンを受けている光景もありました。どんな高さだろうが誰も文句を言わないし、弾くのに特に支障があるとも思っていない様子でした。また、悪いピアノしか与えられていなければ自分の内から湧き出す表現力のほうを高めるとか、いろんな制約があってもなんとかこなしていまうこと。どんな状況でも聴衆に喜んでもらえるだけのパフォーマンスはできる、という気持ちで毎回の本番に臨むことはプロの条件でしょう。

簡単に言えば、タフになることです。そうすれば、たいていの場合は「稀に見る好条件」にしか見えなくなってきます。

ピアノ練習のヒント : 08:48 : comments (x) : trackback (x)
本番力について

一発勝負の本番で自分の本来の力をちゃんと出すことができるかどうか、この能力を本番力と名付けてみました。例えば人前で歌を歌うとか楽器の生演奏、その他のパフォーマンスで本番に強い人というのは確かにいます。

ピアノも、人前でうまく弾くのは本当に難しいと思います。人前で一発集中してあれだけ多くの音を正しく操らなくてはいけない。ピアノは、意外にそう思われていないかもしれませんが、楽器としては繊細すぎると言ってもいいでしょう。
ところで、本番でどうしても力が出せないという人は、ピアノの演奏に向いていないのでしょうか。もしそう言ってしまうと、おそらくほとんどの人は向いていないことになるでしょう。それほどピアノには求められる能力が大きいと思います。
ただ、人によって得意不得意な部分は違います。ある人は、人に見られているほうがうまくいく、それも観客が多いほど気分が乗ってうまくいってしまうという人もいれば、その逆もある。ある人は、本番では必ず手が冷たくなってしまって、どうしたって普通の指の運動にさえ支障が出るとか、精神的に参ってしまうという人もいるでしょう。どんな人にも、強い部分と欠点の部分があると思います。では自分で致命的だと思うほどの欠点があったらどうしたら良いか。もうピアノを人前で弾くのは諦めるべきなのか…。
例えばレコーディングならうまくいくという人もいるでしょう。お客さんがいなければ集中できるし、生演奏でないというプレッシャーの軽減によって本来の力が出せるという人。逆にお客さんがいなければ、1回目は集中して演奏できても2回目以降はどうにも本気が出ないので、もうその日は二度と良い演奏ができないという人。いろんな人がいます。

自分の欠点と思われる部分は誰にもあるかと思いますが、それをどうするか。道は二つあります。
一つは、欠点の部分を鍛えて能力を高め、ある程度克服してしまうこと。これには年月と努力が要ります。もう一つは、自分の欠点が目立たないようにすること。これは、長所をうまく見せることで全体でカバーするというスタイルをとること。どちらも大切です。プロといわれる人は、さりげなくこれをやっていると思います。自分の長所と短所を見極めるということですね。
何度も何度も人前での本番を経験して、自分を正しく知っていくことが大事です。そしてどんな状況においてもこれだけのものは出せる、という自信をつくること。これこれの条件が揃わなければダメ、というような人は確かに演奏家向きではないかもしれません。(続く)

ピアノ練習のヒント : 08:53 : comments (x) : trackback (x)
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