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バッハのピアノ曲(2)

先日、清水和音さん(ピアニスト)と話していて、彼は最近聴きに行ったという外国人のある若手ピアニストを絶賛していたのですが、その人のレパートリーは、フレスコバルディなどバロックでもかなり古いほうの作曲家と、あとはベリオなど前衛というか現代モノだけだったとか。それがまたとても素晴らしかったということらしいのですが、レパートリーとして見ると、古典派からロマン派~近代というあたりがすっぽり抜けていて、ルネサンス~初期バロックとバリバリ現代しか弾かない(笑)らしい。たまたまだったのかもしれませんが、そんなピアニストもありという時代になったのかもしれません。

そうは言っても、クラシック音楽で重要なものはやはりバロックから古典派~ロマン派~近代あたりに多いことは事実でしょうから、引き続きピアノ曲のスタンダードな名曲というものを紹介していきたいと思います。

さてバッハの続きですが、先日挙げた曲はすべて最重要の作品なので、ピアノ学習者にはひととおりの知識と実際に演奏して指と耳で曲を一応知っていることは必須だと思います。
インヴェンションは、たったの二声で書かれていますが、右手と左手が別々のことを鍵盤上で行なうのは初級者にはなかなか至難です。旋律を「歌う」ということは、そこに内的な強弱表現が生じなければいけませんが、両手で別々の独立した感じ方をしなければいけないのです。つまり、まるで二人の別人が演奏しているように、フレーズも強弱も自分の思うようにコントロールできなければならないわけです。これがピアノを弾く上で最初に誰もが通る難関です。しかも、すぐその先には「シンフォニア」という三声を同時に扱う曲を勉強しなければならず、たった2本の手で三声を処理するというのは、私自身が子供時代に感じたことですが「これは絶対に無理だ」と思いました。(笑)
それでも人間というもの、熟練していくうちに信じられないことがだんだんできるようになるのですから不思議なものなのですが。

バッハを理解するには、やはりカンタータや受難曲のような声楽やオーケストラを伴う作品、宗教音楽の数々に触れていなければいけないでしょう。そして、オーケストラがどのように使われているか、またコラールや大規模な合唱曲の持つ響き、パイプオルガンの音色が生み出す雰囲気と多彩さなどが、無限の広がりのある音楽として頭のなかに鳴り響いてこなければいけません。たとえ純粋に器楽曲としてチェンバロを想定した楽曲であっても、そのような音楽的宇宙の広がりを自分の中に持っていなければ豊かな表現力は生まれてこないと思います。

無伴奏チェロ組曲のように、たった1本の弓でチェロを演奏しても複数の楽器で演奏されているような効果を生み出すことが必要とされるように、ピアノでもオーケストラのあらゆる楽器が聞こえてくるように演奏しなくてはいけない曲はたくさんあります。例えば、全48曲の「平均律」の中にもさまざまな曲種が散りばめられいて、奏者に豊かな音楽体験がなければ、すべての曲を魅力的に弾くことは難しいように思います。

バッハは、1713年頃にはヴィヴァルディなどイタリアの作曲家からも影響を受けて、作風に新しい要素が加わって音楽に魅力が増してきます。ピアノ学習者にとっては「イタリア協奏曲」は重要なレパートリーです。この曲は音楽的にも素晴らしく、そうしたイタリア的なものを典型的に学べる曲です。いわゆる、協奏曲風の雰囲気=Tuttiとソロが交代して進んでいく(ヴィヴァルディの「春」など思い浮かべると良いでしょう)音楽が持つ躍動感は独特のものです。これは古典派以降の音楽にはあまり出てこないものです。その種の音楽は、バッハのこの曲で勉強しておくのが良いでしょう。つまりクレッシェンドやデクレッシェンドを伴わなずにfpを交代させるような強弱法、つまり階段状の強弱法(Terrassendynamik)の概念が必要なのですが、この強弱法さえちゃんと理解している人は少ないのです。頭で分かっていても、バッハの管弦楽組曲を聴いたり、バロック音楽の、それも特にこういうイタリア風の協奏曲形式の音楽をたくさん聴いた経験がないと、ピアノで演奏する際に自分でその雰囲気を表現することはできないのです。だから、たくさんの音楽を聴く経験が大事なわけです。モーツァルトのピアノ協奏曲やオペラの序曲などには、このイタリア的雰囲気はよく現れます。ベートーヴェン以降にはほとんど現れません。

バロック音楽特有の表現はバロック音楽でしか勉強できないものがありますが、それは決してその後の時代の作曲家を演奏する際に必要なくなるものではありません。やはり順を追って、知識的にも経験的にも勉強しておかなければいけないものがあります。そういう意味では、やはりバロック時代の多様なエレメントを持つバッハの作品は、現在のところ避けて通れないものがあるのではないかと思います。

ピアノ練習のヒント : 19:25 : comments (x) : trackback (x)
バッハのピアノ(クラヴィーア)曲

世界中のピアノ学習者がとても頻繁に演奏する、あるいは、必ず勉強するというピアノ曲レパートリーというものを考えてみたいと思います。ピアノのための音楽は今も増え続けています。もちろん同時代の作曲家による作品も出版されていきますが、過去の埋もれていた作品が発掘されるケースも多くなりました。いろんな条件が重なって、今まで誰も知らなかったような作品にまでアクセスできるようになりました。

ただそういう時代ではありますが、その中で誰もが名曲とみなして演奏し続けている作品、これは世界のピアニストたちがよく演奏するレパートリーと一致しているわけですが、それはかなり限られた範囲に収まります。その中には、ピアノを勉強する人が必ず通らなければいけない作品もあり、あるいは古今の名曲あり、また音大の試験やコンクールでよく弾かれる曲とも重なっています。確実にあと数十年、ひょっとすると今から100年後も演奏され続けているであろう作品というものを考えます。主要な作曲家10人を取り上げてピアノ曲の紹介をしていきたいと思います。

まずはバッハから。
バッハには膨大な数の「クラヴィーア」曲が存在します。当時ピアノという楽器はまだ発明途上できちんと存在しなかったと言っても良い時代だったので、オルガン曲以外はおもにチェンバロで演奏されていたと思います。それを現在のピアノ学習者は当然ながらピアノで演奏します。ちなみに、クラヴィーア(Klavier)という語はドイツ語では今では普通に「ピアノ」のことを指します。ピアノ曲の楽譜は、現在市場で手に入る楽譜はかなりの範囲を網羅していますが、実際にメジャーなものとしては以下の作品あたりでしょうか。

・インヴェンションとシンフォニア
・フランス組曲
・イギリス組曲
・平均律クラヴィーア曲集(第1巻・第2巻)
・6つのパルティータ
・イタリア協奏曲

これ以外にも、「ゴルドベルク変奏曲」や「半音階的幻想曲」など、タイトルも有名でよく知られている曲はありますし、音大のピアノ科学生がよく取り上げる特定の作品もあります。でもそれらは誰もが取り上げる作品とは言えません。また、もっと易しい曲集もありますが、演奏会で取り上げられないものは除外します。上の作品群も、決してすべてが演奏会でよく弾かれるというわけではありませんが、ピアノの学習においては最重要な作品と言えると思います。

たったこれだけの上記のレパートリーですが、これをすべて弾いたことがある人は、よほどのバッハマニアかプロのチェンバロ奏者以外にはいないと思います。平均律だけでも、プレリュードとフーガで1曲として24の調性で2巻分48曲ありますから、音大のピアノ科の4年間、あるいは大学院まで含めて6年かけても全部を弾く人は普通いません。ただ、バッハ自身は弟子のH.N.ゲルバーに平均律全曲を3回も弾いて聴かせたという話が残っていて、それが一体どれだけ素晴らしい演奏だったか想像してみたくはなりますが、実際に自分で弾くとなるとかなり大変でしょう。音大のピアノ科学生でも、4年間で「平均律」は半分こなせれば十分かもしれません。ただ、楽譜上での勉強ということなら音源を聴いたりして全曲に通じることは可能です。

バッハは、教育的立場から自分の曲集を効果的に使い、インヴェンション(とシンフォニア)からフランス組曲、イギリス組曲、そして平均律へと段階を上げながらレッスンをしていたと言われています。現代でも、だいたいこの順序でバッハを網羅的にレッスンされている先生は多いと思います。「6つのパルティータ」は、かなり大規模な作品なので手をつけない人も多いかもしれませんがとても重要な作品です。

ピアノ練習のヒント : 10:03 : comments (x) : trackback (x)
『辻井伸行 奇跡の音色』が文庫化!



2011年に出版されてまだ2年しか経っていない『辻井伸行 奇跡の音色』(神原一光著・アスコム刊)が、このたび文庫化されました!
この本は、おもに私と辻井伸行君の二人にスポットが当たり、その12年間の歩みが一体どのようなものだったのか、指導者であった私自身の生い立ちも混じえて詳細に取材されたもので、NHKの番組「心の遺伝子」が放映されたことがきっかけとなって生まれた本です。
そして今日さっそくこの新刊本を手にとって開いてみましたが、新たな文庫版あとがきが26ページも書き足されていて、著者であるNHKディレクターの神原一光さんの意気込みが感じられました。神原さんは、現在も世界を飛び回って辻井伸行の取材を続けられている方です。ピアニストという職業に愛情を持って接してくださっているのを感じます。この本がまた新しい多くの人たちに読まれることは私もとても嬉しく思います。

もう1冊ご紹介したい本は、2月末に出版された新刊本で『私がピアノを教えるべき11の理由』(ヤマハミュージックメーディア刊)です。



この本はピアノ指導者など11人へのインタビュー集で、ライターの飯田有紗さんが著者となってまとめられたものです。ヤマハから出ていた『あなたがピアノを続けるべき11の理由』に続くシリーズ2冊目の本です。自分が取材されたものが含まれている本ですので、出版後少し日が経ってしまいましたがあわせてご紹介させていただきました。

雑記 : 13:02 : comments (x) : trackback (x)
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