1週間前に辻井伸行君が出演していた「クラシック音楽館」を無事に観ることができました。先日その番組を録画し忘れたことをブログに書いた後、なんと親切にも皆さんからいろいろ教えてもらって観ることができました。NHKプラスに登録すれば観ることができる、ということはもちろん知っていたのですが、これまでに登録しようと何度も試みましたがなぜかいつもうまく登録できず、途中までは進むのだけれども設定の段階で何かが問題でダメか、あるいはいろいろ情報を入力するのが面倒になって諦めたりしていました。でもその後サービスが向上したのかどうか知りませんが、今回はなぜかそれが楽に登録と設定がうまくいったので滑り込みで観ることができました。
6月にサントリーホールで実際に聴いたラフマニノフの『パガニーニ狂詩曲』ですが、やはりテレビで聴くのとでは印象に大きな違いがありました。いや耳を疑うほど違うと感じた点もあります。ホールでオーケストラが弱いと感じたのは、確かにテレビで聴いてもいくらか感じましたが、それはピアノ協奏曲なので当然オケは伴奏に徹するわけで、そういう音の出し方によるところもあったかもしれません。でもそれがホールでは確かに何か迫力が足りないと感じたのは、あまりパワフルすぎる音を好まないあの若い指揮者さんの好みも影響もしていたかもしれません。ただ、テレビでは放送のために各楽器の音量などの調整はされているとは思うものの、バランスについてはホールで聴いた違和感はまったく感じませんでした。むしろ良いバランスを作ってオケがピアノを引き立たせていたようにさえ感じました。
それに、コンチェルトでのピアノの音はもちろんテレビでは(マイクを通しているので)クリアに聴こえるのは当然なのですが、ホールではテンポが速すぎて聴こえない(あるいはあまりバランスが良くない)と思った箇所は、テレビで聴く限りはそれもまったく感じませんでした。ホールで少し感じた「ただ速く弾いているだけの印象」というのもまったくなく、CD録音のようなまとまった演奏に聴こえたのが本当にビックリしました。私などはもう何十年もそのようなことは経験しているはずなのですが、それにしてもこれだけ演奏が違って聴こえるというのはやはり驚きです。録音技術の魔法なのか…、いや、やはりホールの演奏で得られるものと録音音源の性質というものは本質的に全然違うものなのでしょう。今でも毎回驚きますが、テレビで音を通して聴いてみて、思っていたよりも辻井君はライブでも細部にわたってすごいクオリティの演奏をしていたということがわかりました。
番組の最後に他の日の彼のリサイタル公演から2曲ほどソロの演奏シーンが放映されていて、そこで2曲目に弾いていた『大洋のエチュード』の演奏の最中にピアノの弦が切れた、ということをSNSなどで書いている人がいたのでそれがどういうことだったのか気になっていたのですが、それについても状況を知ることができました。なんとテレビで見てもはっきりわかるくらい、確かに演奏中に弦が切れていました。それは音でわかるだけではなく、切れた弦が1本ビヨーンと外に飛び出してきたのがテレビに写っているのです。かなりの至近距離(カメラによる)であのような光景を見たのは私も初めてです。しかもあの弦は見たところ巻き線ではないでしょうか。とても目立つものでした。断弦時は演奏者自身にもすごい音が跳ね返るので辻井君はビックリしたと思います。でも彼は一瞬動揺しただけで、その後はすぐそのまま最後まで演奏を続けていました。プロ根性ですね。
ちなみにピアノは弦が1本切れても音にそれほど影響が出ない場合が多いです。通常は1つの音に3本の弦が張ってありますが、あの切れた弦が巻き線だったとしたら、右手で弾いた音ではなく左手で弾いた低音の「ド」だったのではないでしょうか。巻き線はあの音域だと1つの音に2本張ってあるはずなので音への影響はあまりなかったと思います。もし1本しか張っていないさらに低音の弦だったとしたらその音は出なくなってしまいますが、私でもこれまでにそんなことになったピアノは2回ほどしか(しかもどちらも外国での話)見たことがありません。
でも辻井君のリサイタルでのこのような断弦はかなりレアなケースではないかと思いました。話としては「余談」ということになりますが、ピアニストにとっては似たようなことが稀に起こらないとは限らないので、本番での心得だけはしておかなければいけません。
それにしても録画を忘れた番組を観ることができて良かったです。気にかけて教えてくださった方には感謝です。テレビで演奏をもう一度聴くことができて、ホールで聴いた経験にプラスアルファの貴重な情報を足すことができました。