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人名、おもに作曲家名のアクセントの位置について


日本語はカタカナという便利な表記法があって、これで外国人の名前も地名なども全部表現できるというのはすごいことだと思います。日本語には独自の確立された世界観がすでにあるので、いろんな言語をどう表記するかということについて、先人たちが苦労して一定のルールのようなものも作られているように思います。五十音であらゆる言語の音を表せるということがすごいことだと思います。

ただ、このカタカナ表記で表すことができないものに「アクセント」というものがあります。外国語ではアクセントの位置がはっきりしていることが非常に多いのに、日本語ではそれを表わすことができません。そのため、アクセントについてはけっこうアバウトな感覚を持っている日本語話者は多いと思います。

作曲家の名前で言えば、例えばショパンは日本語では「ショ」にアクセントをつけますが(外国人は驚くでしょう!)、実際はフランス語風に「パ」にアクセントがつきます。ラヴェルも「ヴェ」にアクセントです。日本語では「ラ」にアクセントをつけると思います。英語で喋る時もフランス語風と同じアクセントの位置になるはずですが、日本語を喋っている時にはそれに倣うことはできません。言語の特性が違いすぎるのです。同様に、作曲家名だけでも信じられないくらいに原語と日本語ではアクセントの位置が合っていないものがあります。それはおもにロシア語の名前にもよく見られます。アクセントの位置が原語のそれと違うと、外国語で話している場合は通じないことさえあります。

特に日本人には意外だと思われるもの例としては、例えば「ムソルグスキー」は皆さんどのように発音されるでしょうか。おそらく「グ」あたりにアクセントをつけるのではないでしょうか。実際は最初の「ム」にアクセントがあります。しかもその「ム」を伸ばします。バラキレフはどうでしょう。私は「キ」にアクセントつけたいですが、実際は「ラ」にアクセントがつきます。先日紹介したピアニスト、クルティシェフは最初の「ク」にアクセントです。
ちなみにロシア語ではアクセントは強い音であるというよりも「伸ばす」という意味合いが大きいのです。それで例えば『ロシア音楽史』(全音楽譜出版社)という本では、作曲家名をできるだけ発音に忠実にするために、本の中に出てくるなんとすべての名前に長音記号が入れられています。たとえば「バラーキレフ」「チャイコーフスキイ」「ムーソルグスキイ」など。そのこだわりは痛いほどわかるものの、実際にロシア名にその表記を採用している音楽書・一般書はほとんどないので、普通の日本の読者には必ずしも読みやすいものではないと思います。

ただ、それでもロシア語の名前のアクセント(長音)は重要なものではあるので、知っておいても良いかもしれません。カプースチンも、最初に日本に知られた当初は「カプスティン」という表記でした。マルク=アンドレ・アムランが東京で行ったリサイタルのプログラムに、作曲家名がはっきりとこの表記で書かれていました。2000年8月に日本でリリースされた自作自演のCDで「カプースチン」と表記された時あたりから現在の形に定着したと思われます。
でも、ロシア語の名前には本当にわかりにくいものがあって、例えば私が子供の頃に世界的に有名になったウラディーミル・アシュケナージの名前が、ラジオでアナウンサーが「ウラディミール」と発音していたり、レコードのジャケットにもそう書かれていたのを記憶していますが、これは実際にロシア語を知ると「ウラディーミル」あるいは「ヴラディーミル」と発音するのが正しいことがわかります。日本語の語感とは確かに合わないものがあると思います。(私自身もかなり長く「ウラディミール」が正しいと信じていました。)

日本語を話している時にはアクセントや抑揚についてはあまり意識しないことが多いと思いますが、少なくともクラシック音楽を学んでいる人は(ジャズを学んでいても?)、音楽の語り口というものは言語とすごく関係があるのだから、やはり聴衆にはっきり伝えることができるニュアンスや表現というものを意識してその感覚を磨いていく必要もあるのではないかと思います。


※全然別件ですが、今度の日曜日(7/19)23:00~にピアニスト辻井伸行が登場する予定のTBS「情熱大陸」は必見です。もうすでにいろんなところから情報が入ってきておりますが、どうやら今までの番組と比べると異色の(秘密が明かされる?!)内容になっているということです。これは絶対に録画を忘れないようにしたいと思っています。

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