先日の「カプースチン夏フェス2026!」の出演者の一人、ルカ・ニューマン君(16歳)は2曲の演奏会用エチュードを披露してくれた翌日、私の前で『ピアノ協奏曲第3番』を弾いて聴かせてくれました。

ちょっと信じられない話にも思えるのですが、彼がカプースチンの音楽を知ったのは昨年の12月とのことだそうです。おそらくYoutubeでいろんな演奏を聴いたのでしょうが、その中でいくつかカプースチンのピアノ協奏曲にも強く惹かれたようで、最初は2番、そしてどうやら私が演奏した音源を中心に3番と6番に出合い、それがきっかけで今年に入ってから私に連絡をくれたのです。彼はイギリスのパーセル音楽学校で勉強中の学生です。
『ピアノ協奏曲第3番』の第1楽章は最後のカデンツァも含めてすべてをテンポで弾き切ることができるレベルで弾けていて、また『ピアノ協奏曲第6番』も第3楽章を聴かせてもらいましたが、こちらも通せるレベルで練習していました。また『2台ピアノと打楽器のための協奏曲 作品104』は全楽章をやっていてイギリスに帰ったら演奏する予定とのことです。カプースチンをよく知っている人はわかると思いますが、上の曲はすべて難曲中の難曲に入るレベルです。どの作品も出版元のショット社に問い合わせて楽譜を入手したようですが、出版社からは総譜とパート譜しかレンタルできないので、第6番はどうしても2台ピアノ用の楽譜が必要で自分自身でスコアから楽譜を作ったと言っていました。その現物も見せてもらいました。
ピアノ協奏曲第3番はおそらく実際に楽譜を取り寄せる人はほとんどいないのではないでしょうか。あの曲はオーケストラ+ビッグバンドで最低71人の奏者が必要なコンチェルトで、そう簡単に演奏の機会が持てるわけがありません。でもそんなことなど関係なく好きな曲は何でも本気で取り組み、ものすごく練習して音楽的に弾いていたので強く心を打たれました。もうこれは正真正銘のカプースチン弾きになっていますね。

この楽譜で相当に弾きこんでいるようです。
ちなみに『第3番』は少なくともショット社から楽譜を取り寄せたピアニストがもう一人います。それはドイツのフランク・デュプレです。彼がついにカプースチンのピアノ協奏曲全6曲のCD録音をコンプリートして、いよいよ第1番と第3番が入った完成版が11月にリリースされることと思います。それはカプースチンが広まってきたこの数十年の歴史の中で一つの快挙でしょう。
ただ、現時点では第3番の録音は私が10年前に初演したものがかろうじてYoutubeなどで聴けるだけで、誰も実際に楽譜を取り寄せてそれを練習してみようなどとは考えないだろうと思っていました。そういう意味でルカ君の取った行動は私にとっても衝撃的でした。
彼はこれからどんな音楽活動をしていくのでしょうか。作曲のコンクールでも実力を現わし始めているようです。彼の今後の活動を楽しみにしていきたいと思います。またカプースチンのイベントもぜひ一緒にやりましょう!