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カプースチンの6曲の『ピアノ協奏曲』について


実はカプースチンにはピアノとオーケストラ(またはビッグバンド)のための作品がたくさんあります。『ピアノ協奏曲』というタイトルが与えられた6曲以外に『変奏曲 作品3』、『トッカー タ作品8』、『コンサート・ラプソディ 作品25』などいろいろあるのです。聴いてすぐにわかるほど、それらはピアノ協奏曲の形をしています。「でもピアノ+バンドの編成でピアノ協奏曲とは言わないでしょ?」という人がいるかもしれませんが、カプースチンのピアノ協奏曲『第1番』や『第6番』は純粋にビッグバンド+ピアノの編成なのです。カプースチンはそれらの曲にも「協奏曲」の名を与えているのです。反対に第4番のように弦楽器群が占める割合が大きく金管が入らない編成の作品もあり、彼が「ピアノ協奏曲」して発想しているものは私たちが常識的に思っているものとは違って少し幅広いように思います。

少し頭の中をまとめておく意味で、6曲のピアノ協奏曲について簡単に紹介しておきたいと思います。
一番演奏される頻度が多いのは『第2番』です。これは作曲者本人による録音が残っていることも関係するし(ピアノ協奏曲の自作自演盤はこれのみが存在)、あとは曲がわかりやすいというのが一番人気の理由でしょう。先日の角野隼斗さんも最初に手がけたピアノ協奏曲でしたし、世界中でこれまでにたくさんのピアニストが演奏しています。録音も動画も多いのでいろんな演奏を聴くことができるでしょう。
次に演奏される頻度が多いのは『第4番』でしょう。これは通常のオーケストラに近い編成で演奏がしやすいことも関係しているでしょうし、キャッチーなメロディが多くてリズムの推進力もあり、そしてあの圧巻の長いコーダも人気の理由かもしれません。また比較的早くから音源の露出があったことも影響しているでしょう。
その次に演奏されるピアノ協奏曲となるとグッと頻度が減ると思います。おそらく『第5番』あたりでしょうか。この曲は私が2018年に演奏したのが日本初演で、CD録音もそれが世界初でした。その後もあまり演奏されていませんが、最近になってドイツのピアニスト、フランク・デュプレがヨーロッパのあちこちの都市で何回も演奏するようになりました。素晴らしいCD録音も残しています。
さらに演奏される機会の少ない『第6番』は世界初演がようやく2013年。その後は数名のピアニストが演奏していますが頻度はとても少ないでしょう。『第3番』も長大編成のオーケストラが必要なので演奏のチャンスを作ること自体が難しいでしょう。2016年に世界初演後、今年行われたデュプレのCD録音までおそらく誰も演奏していないでしょう。
『第1番』も同様で、こちらは長らく楽譜が手に入らないと思われていましたが、作曲者が2012年に改訂版を作っていて、その楽譜がようやく手に入ることになってここ数年でいくつかのバンドで演奏されています。

そんなわけで、カプースチンの『ピアノ協奏曲』は歴史的に見ても演奏されること自体がまだ珍しい段階ではないかと思います。角野隼斗さんが取り上げたピアノ協奏曲の順番は、カプースチンを正当に広めるために非常に妥当なものと言えるでしょう。それがまた大衆にアピールする力を発揮しているようにも思います。ちなみに彼は他のカプースチンの協奏的作品として、3年ほど前に『ヴァイオリンとピアノと弦楽のための協奏曲 作品105』を日本初演していることも特筆に値するでしょう。

ただとにかく今の彼のスケジュールで、あのカプースチンの『第4番』を颯爽と弾いているのを見て凄いとは思ったのですが、その終演後に彼と直に話をしてみてもっと驚きました。やはりその人の本当の凄さは会話をしてみないとわかりません。もちろん演奏からだけでもいろんなことを感じることはできますが、やはり本人と話すことで情報量に圧倒的なものが加わります。多くの人がその演奏を聴いて感動し、また演奏を批評したりもするのでしょうが、私は純粋に彼の最近の活動=作曲・初演を含めた一連の移動や公演スケジュールを知った上で、あの飄々とした感じを見るとやはり常人ではないな(笑)と思いました。彼の人気の秘密がわかった気がします。彼はあんなに簡単そうに弾いていましたが、あのカプースチンの『第4番』はソリストにとっても大変な曲なのです! 同じあの曲の演奏を経験した者として、その意味の大きさをあらためて強調しておきたいと思いました。

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