Site Overlay

カプースチンからの手紙[第21回]

[2007年2月13日]
「親愛なるマサヒロ!


あなたが具体的にどの作品を録音しようとしているのか知りたいですね。私が最近練習していたいくつかの作品と同じようなことにならないようチェックしておきたい。というのは、膨大な量の誤植を正すことになったし、楽譜に大胆に手を入れた個所さえあるので。
12番のソナタはもう録音が二つありますよ。もちろんあなたが必要と思うならそれを録音しても良いけど。でも皆は思うだろうな、まだ誰にも録音されていない作品をあなたもアムランもそれぞれ2曲ずつしか録音しなかったと。

Natsukoとの連絡が途切れてしまった。メールが戻って来るのだが、何が起きているのかわからない。私は彼女に「私の録音は4月の後半に(2003年の時と同じように)お願いしたい」と書いた。でも同時に「3月10日までは回答を待ってほしい(その時にははっきりと確定できるので)」ともお願いしたんだ。
(~以下略~)

やっぱりいくつかの私の作品のうちで速いテンポで弾くのは不安です。なぜか速いテンポで弾くということが難しくなってきたのだ。それは歳のせいなのか、はたまた練習がまだ足りていないのか…。

敬具
N. Kapustin」


このメールの前(2007年1月)にもカプースチンからメールはありましたが、そこでは自分のCD録音の準備のことで頭が一杯なことと、腰の痛みが再発してきたとかで体が痛いらしく、おもに体の状態やケアのことなどをいろいろ書いて教えてくれていました。あとは自作の『ユモレスク』が「恐ろしく難しい!!!」とか(本当にビックリマークが3本ありました(笑))
まあそんな内容だったのでそのメールは割愛します。

そして上は2007年2月のメール。
ここで皆さんにご報告ですが、私がカプースチンと15年間交わしたメールのうち「送信済アイテムはすべて失われた」と一回書いたのですが、なんと自分のメールの一部が復活して戻ってきました!
ですので、今後は二人のやり取りの内容をより詳細にお伝えすることができそうです。

私はカプースチンに自分の活動のことを逐一報告していたことを思い出しました。一つ前のメールで「先週は日本のラジオNHK-FMのための公開収録リサイタルをやって、あなたの『ソナティナ』『子守歌』『バガテル第9番』などを弾いてきましたよ!」とか、また早速次のCD録音の準備を進めています!」とか報告していました。彼はそれに対して特に驚くでもなく、いつも淡々と、しかし優しく返信してくれました。そして「ピアノソナタ第11番、第12番、第13番+小品というプログラムで1枚のCDを録音しようと考えているのですが、何かご意見いただきたいです!」とお願いしておりました。
上はそれに対しての回答です。「12番のソナタはもういい」ということでした(笑)。そりゃそうですよね、ご本人がすでにその4年前に素晴らしい録音をCDに録っているのですから。ただ、あまりにも傑作のソナタなのでそれをどうしても入れなかったのですが…。でもカプースチンにしてみれば、他のピアニストにはまだ誰も弾いてないものを録音してほしい、ということなのでしょう。
それで私は結局、CD収録曲としてピアノソナタは第11番と第13番のみ、それに世界初録音を含む小品を4曲というラインナップにしたのでした。(「カプースチン ピアノ作品集③」NAR(2008年))

また上のメールでは自身のCD録音の日程がまだこの時期には決まっていないことがわかります。プロデューサーさんは日本人でしたから、彼は何かと日本と強い繋がりがあったのです。私も彼から信頼されていたのか、「Natsukoにこれこれを伝えてほしい、尋ねてほしい」などということをよく託されておりました。
結局このカプースチンのCD録音は5月になります。(「カプースチン・リターンズ」NAR/TRITON(2007年)) もう20年近く前の話ではあるので、なんだかこのシリーズも私の懐古趣味のような感じになってきました。でもときどきはいくらか貴重な史料的価値を持つ内容もきっと出てくることでしょう。どうか末永くお付き合いいただければ嬉しいです。

上にスクロール
Translate »