最近クラシックの世界ではよく耳にする「マスタークラス」という言葉ですが、日本では定着するまでかなり時間がかかったように思います。楽器奏者で一流の指導者たち、特に海外からの教授や演奏家などが公開の場でレッスンを行なう形式のイベントのことを言います。
日本のピアノ界では「公開レッスン」という言葉はよく使われていますし、ずっと長く存在している言葉ではあります。この言葉はプライベートレッスンではなくステージなどで公開で行うものがイメージされると思います。マスタークラスという言葉の響きからは、もう少し専門性が高く、少しアカデミックな意味合いも感じられるものの、一流の演奏家などが大学などの教育機関に限らずどこかに場を設けて行うというイメージもあります。あるいは単に海外でよく使われる言葉という印象を持つ人もいるかもしれません。海外では大きなステージなどではなく、もう少しラフな会場で行われることもありますし、親密な雰囲気のスペースで少なめの人数で行うこともありますが、原則マスタークラスは公開の場で聴衆を伴うイベントを意味します。そのあたりの言葉の概念は日本人にはまだ少し曖昧で、マスタークラスと言って必ずしも「公開のレッスン」ではなく個人レッスンも意味すると思う人もいるかもしれません。
私はピアノ指導の修行という意味においては、これまで何度も参加したイタリアのペルージャ音楽祭で相当鍛えられました。現地ではプライベートレッスンとマスタークラス(公開)があって、マスタークラスでは聴講が自由でかなり広めの部屋などで行われました。出入りが完全に自由な場合もあります。指導する側も慣れていない場合はそれなりに緊張する場でもあります。実際に外国人の教授でも、私などから見て「こりゃ先生の方が緊張しているな」と思えるようなシーンも多々目撃しました(笑)。まあ人のことをあまり言える立場でもなく、確かにあの雰囲気の中でレッスンを行なったことで私自身も大きく成長させられました。世界各地の音楽大学などから参加する多国籍の学生たちを前にして、彼らの母国語が何であるのか、あるいは受講生のバックグラウンドもよく分からないままにレッスンを始めなければいけない場合もあります。会話もとても大事で、その上に相手への想像力、洞察力を働かせる必要もあります。そのような場での共通語はもちろん英語ですので、例えば私が日本人の学生に指導する場合でも日本語を喋るのはマナー違反と思われるような緊張感もありました。
とにかく指導する側には、受講生個人にとっても有益なアドバイスをすると同時に、聴講者たちにも「観ていただく価値のあるパフォーマンス」が求められるわけなのです。
さて話を日本に戻しますが、5月11日(月)にはベヒシュタイン東京で主催されているカプースチンに特化したマスタークラスを行ないます。さすがはベヒシュタインさん、「マスタークラス」と命名したことでカプースチンを演奏する多彩な受講生があっという間に集まってしまった、という感があります。でもこういうイベントこそまさにマスタークラスとしか言いようのないものかもしれません。今回のような内容は海外の人たちも興味を持つ人がいるかもしれず、とにかくカプースチンを勉強する人にとっては大きな価値を持つものになるかもしれません。当日はベヒシュタインのよく調整された大きなグランドピアノがホールのステージに2台並べられるということで、そんな豪華な環境でできるのも嬉しいことです。
さて、その日のマスタークラスの受講生の中には私が既知の方もいらっしゃるのですが、その中にはカプースチン歴が長い方も入っており、その中の数名はちょうど明日(4/25(土))横浜のフィリアホールで行われる「カプースチン三昧」コンサートにも出演されるようです。(「カプースチン三昧」の内容告知についての記事は→こちらです(リンク))
明日の「カプースチン三昧」は12:30から16:30頃までの三部構成で、プログラムを拝見すると毎年の「カプースチン祭り」に常連の方々の名前も散見されます。このイベントは、カプースチンをもっとよく知りたい!という方には特に価値のあるコンサートになることと思います。この内容で「入場無料」というのは皆さんサービス精神が旺盛すぎます。非常に充実したプログラムですから、興味のある人はぜひ内容をチェックして聴きに行ってみてください。