以前から「辻井伸行のカプースチンが素晴らしい!」というような声をよく聞いていて、つい最近どこからともなく、彼が「カプースチンの『8つの演奏会用エチュード 作品40』をミュンヘンのリサイタルで弾く」などという情報が入ってきました。最近は直接本人から話を聞く機会はほとんどなくなったので詳しくは私も知らなかったのですが、サイトなどを調べて得た情報によれば、もう数日後の4/24にニューヨークから始まって、その後ヨーロッパへ飛んで次から次へと都市を飛び回ってかなり忙しい演奏会のスケジュールをこなす予定のようです。
5月半ばにはすぐ日本でのツアー「音楽と絵画コンサート」が始まるので、今回の海外滞在はそれほど長期間ではありませんが、ニューヨーク、ミュンヘン、リガ、パリなどの各地でベートーヴェンやグリークのコンチェルトのほかに室内楽曲、それに加えてソロ・リサイタルでは彼のお得意曲とはいえチャイコフスキー=プレトニョフの『くるみ割り人形』や、カプースチンの作品40を全曲を入れた作品を弾く!という、なかなかハードなプログラムが用意されているようです。
カプースチンの作品40の8つのエチュードに関しては、彼は中学生の時にその中の1曲だけは弾いていましたが、8曲すべてに取りかかったのは今から8年前くらいのことです。それをコンサートで取り上げようとすること自体が画期的なことでした。その時は先にCD録音を準備していたので、その8曲の全曲録音がうまく行って無事にリリースされた時点でホッとして、「ライブではまさか全曲を弾くことなどないのだろうな…」と私は思っていたのですが、その思いを翌年の彼の国内ツアーが始まる前に嬉しくも完全に裏切られたのです。(笑)
とにかくこの8つのエチュードは全曲続けて弾くだけでも大変ですし、しかもライブで大ホールなどで演奏するのは特に難易度が高いと思います。カプースチンが大好きというピアニストでも、それを実際にやってみようと思う人は少ないでしょう。
ちなみに彼のほかにこの作品40を全曲弾いた人で有名なところでは、近年になって角野隼斗さんが取り上げたり、新しい情報では黒木雪音さんも最近リサイタルで全曲演奏したということですが、もちろん世界の他のピアニストたちに先立って辻井君が先鞭をつけた形かと思います。しかも彼は今に至るまで世界中のあちこちのホールでこの8つのエチュードを弾き続けているわけです。アンコールに1曲だけカプースチンのエチュードを披露するというパターンもとても多く見られますが、どうやらどこへ行っても現地で大喝采を受けているらしいのです。おーこれぞ本物のカプースチン伝道者!
そしてプログラムに組み込む場合は、堂々たる順序でカプースチンの『8つのエチュード 作品40』を最後に配置します。この作品をメインと考えているピアニストにとってはもちろん王道と言って良い順番だと思います。
もちろん彼の得意分野はそれだけではなく、一年を通じてものすごいスケジュールでさまざまなレパートリーを含んだコンサートをこなしています。外に見えているスケジュールだけでも超人的なライフスタイルを過ごしていることが伺えます。一体いつ休憩しているのか…。
そんな彼に、今年もどこかその活動の真っただ中に接触できる機会があると嬉しいなと考えているところです。