今回この8月のセッションに参加している教授陣は、私たち日本からの二人(もう一人は神戸女学院大学の田中修二先生)を含めて十数人が集まっています。学生たちは、ある程度ランダムに組まれたスケジュールに従って、あらゆる国から来られた先生のレッスンを受けるわけです。
今回は私も2年ぶりだったので、初めて出会う先生も多かったのですが、その中でもアメリカ人のMatthew Quickさんとは初日から気が合ってしまいました。性格も温和で、なぜか私との共通点が多くて親近感が沸いてきました。
ちなみに、彼は中国の成都の音楽院で教えているので住んでいるのは中国です。奥さんも中国人。今回二人で一緒にPerugiaに来ているのですが、とても感じの良い二人で私たちもすぐに仲良くなってしまいました。
ところでこのペルージャ音楽祭のマスタークラスでは、学生たちがレッスンに持ってくる曲は、彼らが学んでいる国や国籍によってそれほど大きく変わるわけではありません。ただ、今回もすでに面白い子が来ました。アメリカのシアトルで勉強している男の子でBenjamin Cheungという名前の子ですが、私のレッスンでシチェドリンのPoemという曲を弾いてくれたのも少し珍しい選曲だとは思いましたが、それに自作のプレリュードとフーガを弾いてくれました。作曲を始めたのはまだ2年前くらいということでしたが、よく勉強していて、24曲すべての調性でのプレリュードとフーガの作曲を進めているということです。すでに完成した数曲を手書きの楽譜でも見せてくれました。
彼はバッハよりもむしろショスタコーヴィチの「24のプレリュードとフーガ」を模範にしているということでしたが、調性の並べ方はBachにちなんで自分の名前を音に置き換えた独自の方法でe-mollから始まって最後がC-durで終わるという配列を考えているそうです。こんなふうに自分のこだわりもあるし、また作曲のセンスもあってすごいと思ったのですが、本当にビックリしたのは以下のことです。
自作のプレリュードとフーガからA-durの作品を弾いてくれて、これを今回コンサートでも披露するそうですが、ショスタコーヴィチも何曲かは演奏したことがあるそうです。いろんな話をして、最後に、私としては本当にオマケとしての情報として(作風が違うので、一応言うのをためらってはいたのですが)、「カプースチンという作曲家の『24のプレリュードとフーガ』という作品があるのを知っているか?」と訊いたところ、なんと彼はその場でそのカプースチンの「24のプレリュードとフーガ」のA-durのプレリュード冒頭を弾いて見せてくれたのです。これには少々驚きました。
ペルージャ音楽祭には才能を持った子たちが世界からたくさん集まってきています。他にも紹介したい人たちがたくさんいるので、また書きたいと思います。


