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オクターヴが届かない人へ

ピアノを弾く人の手の形と大きさは千差万別です。手が小さくてオクターヴが届かない人は、苦労することが多いと思います。ピアノ曲には、当たり前のように8度音程を同時に押さえなくてはならない曲が断然多いです。それはなぜかといえば、西洋の作曲家が書いたものが多いからでしょう。体格と骨格が違うのですね。日本人より体も手も指も大きいのです。作曲家は普通、自分の手の大きさを標準に考えますから、出来上がってくる曲もそれに合わせたものになるわけです。
こうなったら鍵盤の幅を小さくした新型ピアノを作ってしまえ、という発想も過去にはあったようですが、その考えは結局普及しませんでした。なぜなら、もし自家用にそのようなピアノをあつらえたとしても、自分の家以外では弾くことができないからかも知れません。その型を世界の標準とするわけにはやっぱりいかないでしょうからね。

実際には手の小さい人も現在普及している大きさの鍵盤のピアノで弾かざるを得ませんので、そういう人にはいろんな工夫が必要になってくるでしょう。
まず小学生などまだ手の小さい子に対しては、十分に手が開くようになるまでは、オクターヴを同時に弾かなくてはいけないレパートリーを先生は与えないほうが良いと思います。分散オクターヴは大丈夫です。また、1~2箇所だけ出てくるくらいなら曲によってはOKでしょう。それから、コンクールで課題曲になっている場合にも、届かない音程が含まれている曲は、できるだけ選択を避けたほうが良いです。審査員の先生が分かってしまうからです。どうしても仕方がない場合は、その部分は何らかの音楽的処理をして弾くしかありません。

ある程度大きくなっても骨格的に手が小さくてオクターヴが届かない人もいるでしょう。プロのピアニストの中にもいます。弾けない曲が多いからといって、簡単にピアノをあきらめてしまうのはやはりもったいないことです。手の小さい人も工夫の余地はいろいろあります。
あまりにもオクターヴの連続する(リストの作品のような)曲をあえて弾きたいとは思わないでしょうが、一般的な曲でも弾けないと思う前に次のことを試みてください。
練習上の心得として、まずいくつかあります。“分散オクターヴ”を上手く弾く技術を磨くこと。またそれ以外の広い跳躍に対しても、正確な技術を磨くことが大切です。あと、アルペジオを非常にしなやかに手首を使って弾くことも器用なテクニックの習得につながります。これらについて改善するだけで、必ずしもオクターヴを同時につかめなくともいろんな可能性を引き出すことができます。両手あわせて10本の指を、今よりもはるかに器用に正確に使えるように練習することです。
その上で、実際に出てきたオクターヴあるいは9度以上の音程をどう処理するかを考えます。届かない場合は、次の三つ以外に解決策はありません。

 ① 両手で取れるところは取る
 ② アルペジオとして弾く
 ③ 音を抜く

 ①の両手で取れる可能性はかなりありますので、必ず検討してください。
 ②のアルペジオで弾ける可能性は9度以上の場合は左手に多く出現しますが、音楽的に不自然にならないように一気に弾きたいと思います。その場合、バスとペダルを踏むのが同時になるように気をつけなければいけないパターンが多いです。
 ③の音を抜くというのは、左手のオクターヴの場合は、バスのみを弾くなどのパターンであり得ることはあり得ます。しかし、それ以外はたいへん危険な方法なので、音楽的な流れと響きに違和感がないことを客観的に(作曲家の耳で)聴けることが前提です。先生に聴いてもらって決めるのが良いでしょう。ただ、クラシック作品の場合は、やはり音を勝手に抜いたりするのはあまり好まれませんので、音楽的におかしくならないような選択を最重要と考えてください。

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