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「体力」相応の練習

今年は昨年にも増して体力増強の年です。
お陰様で仕事はいろいろと多いのですが、やはり「練習第一」の姿勢を忘れてはならないと肝に銘じています。長い一年の中では時期によって微妙なバランスはありますが、基本的には毎年が音大受験生のような生活…。

私の知る尊敬すべき現役演奏家の人たちは、70歳〜80歳くらいでもやはり毎日4〜5時間以上は弾く生活を送っていらっしゃる人が多いようです。考えてみたらこれって大変なことだと思います。実のところ、私にはまだそのような生活がどのようなものか想像がつきません。
がむしゃらに練習しているという感じでないことは確かでしょう。練習の仕方や考え方が年齢とともに変わってくるということは、今の自分の歳でもよくわかります。つまり、10代〜20代くらいだと100%以上の本気を出して完璧な練習をして本番に臨めて、そして本番で7割くらいの実力が出せるという感じだと思うのですが、これが歳を経てくるとだんだん逆になってきます。つまり7割くらいの練習ができれば、ある程度本番で完璧な演奏ができるという考え方に変わっていかなければいけないわけです。いつかこの逆転が必ず来ます。だいたい完璧な練習と思っていた若い時のやり方は、実は無謀なだけだったということも多いのです。経験を積むと、それだけ練習の質が上がってくるわけですし、レパートリーも増え、物事の処理能力も高まってくるので、あまり苦労しないで一定の結果が出せるようになってきます。(そうならなくてはいけませんよね。)

何十年も弾き続けているピアニストは、一般的に言って手指や体の小さな故障は日常茶飯事になってくるでしょうし、身体の不調も多くなってくるのが普通ですから、そうそう完璧な状態で毎日を過ごすことはできないものです。
学生の頃の自分はラヴェルの「スカルボ」を5回通して弾いても全然疲れないほどでした。なんという贅沢な体力を持っていたことか! だから、難所の「部分練習」にしても、納得するまで永久に続けられるという感覚を持っていました。今ではとてもそんなことは考えられません…。その代わり、有難いことにそんなことをしないで弾けるようになってきたわけです。

何でも夢中になってやりすぎるとダメですね。若くてもいつか必ず体が悲鳴をあげます。無理のないやり方で続けることが一番です。

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