今週は目まぐるしい1週間でしたが、その中でも大きなトピックはちょうど来日していたアントン・カプースチンさんに会えたことです。アントンさんはアメリカのカリフォルニア工科大学で教鞭をとっている有名な数学者・物理学者で、そしてもちろんあの作曲家ニコライ・カプースチンのご長男です!
今回はなんと10年以上ぶりで日本に来られたようですが、東京大学で5日間にわたる学会があって、そのお仕事に合わせて今回は奥様と小さなお嬢さま方お二人(9歳と3歳!)を伴って4人で日本に来られました。そしてこの機会になんと私にぜひ会いたいとご連絡を頂いて夕食をご一緒してきました!
私としては「ついに会えた!」という感じで、もう一体何から喋ったら良いかわからない(笑)という状況で、もちろんお父様ニコライ・カプースチンのことをたくさん聞かなくてはいけないと思っていたのですが、アントンさんもお父様に似て(?)寡黙なタイプではあって最初は緊張しました。きっと頭の中は難解な数式などで一杯なのだろうな…と思いましたし、「ありきたりな会話では太刀打ちならないかも…」(気の利いたことを言わなければ会話が弾まない?)とも思ったのですが、その感じはお父様カプースチンさんに対して感じたことと同じものではありました。
でもとてもフレンドリーで社交的な奥様の存在もあって、日本料理を戴きながら皆と終始楽しくお喋りすることができました。お父様の作曲生活についても少しお聞きしましたが、やはりカプースチンはアントンさんが学生だった頃から勤勉な生活をしていたことが伺われました。家にいる時は朝早くから仕事をするのがルーティンで、自分たちがまだ寝ている時間はピアノで音を出さずに作曲をしていて、皆が起きたらピアノを弾き始める、という感じで午前中は作曲に勤しむ毎日だったようです。これは私はカプースチン本人から聞いていた晩年の生活スタイルとほぼ一致していました。アントンさんは大学を卒業したらすぐにアメリカに渡ってしまったはずなので、その話は80年代後半から90年代最初の頃のことだったと思います。
ただ、もうその後の大作曲家カプースチンの行方についてはアントンさんはあまり詳しくない、と謙遜していました。彼にお父様の音楽をどのように感じていたかも少しお聞きしてみましたが、初期のビッグバンドの音楽は好きだけれど、その後の大規模な作品や無調を扱ったような音楽はあまりよくわからないという感じでした。あまり音楽について詳しく語ることはない風を装っていましたが、でも子供たちはピアノを習ったり音楽に触れているようです。上のお子さんがショパンを弾いている動画もスマホで聴かせてくれました。(本人は恥ずかしがってテーブルの下に隠れましたが(笑)。)
夕食会に少し遅れて私の家内も駆けつけてくれて、その後も質問の矛先を変えながら話題を増やすことができて楽しかったです。ところで、カプースチンは夏にダーチャで過ごすのが好きだったのですが、それは本当に自然の中で過ごすということが作曲にとって最高の環境だったようで、特にダーチャで植物や野菜を育てていたとか、そういうことはなかったようです(笑)。アントンさんはあまりダーチャには興味がなかったのかな?まあもうアメリカ生活が長いですし…という印象でした。ご両親との生活スタイルは全然違ったものだったのでしょうね。


今回はアントンさんのお子様方のお話もたくさん聞かせてもらえたし、奥様ともお喋りができてご家族と仲良くなれたのが嬉しかったです。次回はもっともっと詳しくお話をお聞きしてみたいと思いました。