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カプースチンの論文について(2025年現在)


すでに20年ほど前からニコライ・カプースチンの作品をテーマにした修士論文は書かれ始めていましたが、ここ最近に至って世界中でどんどん書く人が増えてきて、久しぶりに検索してみたらかなり膨大な論文がすでに存在することがわかりました。

実はちょうど昨日、私のところにスペインの学生から問い合わせがあって、今研究しているカプースチンのテーマに関わることで私に質問したいことがあるのでインタビューをお願いできないか、という連絡を頂いたことがきっかけでふと論文のことに思いがめぐりました。その学生は修士論文を昨年カプースチンですでに書き上げていて、どうやらそれが初めてスペイン語で書かれたカプースチンに関する論文になったとのことです。それはきっと快挙ですね。そして他のテーマでさらにもう一本書く準備に入っているということで私にコンタクトを取ってきました。ぜひ応援したいと思っています。

これまでに書かれたカプースチンをテーマにした論文はその大半が英語のものですが、私がカプースチンの1冊目の本を書いた2018年頃にはまだ論文は合計で十数本くらいしかなかったように思います。その本の巻末に参考資料として論文の情報を6~7本くらい書いておきましたが、それは私自身が当時までに読んで役に立ったと思ったものだけです。ただ、その後ものすごい量の論文が増えているので驚くばかりです。ダウンロードしてすぐに読めるものもあれば、まだ公開されていないものもあるでしょうからきっと点数は膨大だと思います。

とは言え、最初に日本語で書かれた斉藤大輔さんの論文(2006年)とYana Tiulkovaさんの英語の論文(2015年)は、生前のカプースチン本人に複数回のインタビューを行なった上で書かれたということでやはり重要な位置づけになるものだと思います。ちなみにこの二人からは私にも事前に詳細にコンタクトがありましたが、これまでに他にも論文執筆のために何人もの学生から問い合わせは頂きました。例えばペルージャ音楽祭へ行った時は、偶然にそこに私がいたということではありましたが、ちょうどその時カプースチンの論文を書き始めようと思っていたアメリカの学生からいろいろ訊かれたり(2013年頃)、あるいはメールではオーストラリアのパースの大学の学生から詳細な質問リストが送られてきたり(笑)、もちろん日本の学生たちからもさまざまに質問を受けたり協力したりしてきました。

最近書かれたものでは国立音楽大学の大学院生が2022年に書いた日本語の論文も、けっこう広範に研究された上で自身の見解も詳しくまとめられていて、とても丁寧に調べられた良い論文で驚きました。新しいものはまだ公開されていないものも多いと思うのですが、カプースチンについて研究したい人は、少なくとも現在読むことができるものについてはすべてダウンロードしたりなんとか入手して読むべきかと思います。それらの過去の文献を参考にした上で、曲の分析などに多くのページを割いている論文が多いように見受けられますが、クラシックだけでなくジャズにかなり詳しいようであれば、それを生かして内容を組み立てているような論文もあります。まだ誰も気がついていないような新しい視点を加えることも必要でしょう。特にカプースチンの場合は、これ以上の新しい資料が出てこない可能性もあるので、他の音楽ジャンルとの関係性や独自の新たな見解を加えたり、取り上げる作品に工夫を凝らしたり、他の作品との比較力や分析力で勝負するパターンも見られます。

そのようにカプースチンの音楽はもう世界中で、それもアカデミックな見地からも多くの人たちに興味を持たれていることがわかります。私も最近書かれたものでまだ読んでなかったものには急いで目を通さなければいけません。

あとそのスペインの学生にも早く返信しなくてはいけませんね。(忙しい…)

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