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カプースチンと創造的活動


最近はカプースチンを弾くピアニストが増えてきましたが、彼らになんとなく共通している部分として、ある意味の「創造性」を発揮しているということが言えると思います。これは作曲家カプースチンのもともとの発想や彼の音楽そのものからの影響もあるのかもしれません。

このブログでたびたび「カプースチン弾き」としても紹介してきたピアニストのフランク・デュプレですが、彼などもクラシックのピアニストであるものの、ガーシュインの『協奏曲』などのソロでは大胆な自作カデンツァを入れて弾いたりしています。ジャズ・ピアニストのようにある程度の作曲や即興演奏ができるわけです。日本のピアニスト角野隼斗さんなどもデュプレと同じようなスタンスでしょうが、コンサートなどを見ているともう少し自由に曲間に長めの即興を入れたり、また作曲自体ももっと凝っていたりします。どちらにしても創造性は高いと言えるでしょう。

さて上のデュプレは自身のトリオ(ドラマーとベース奏者の3人)でも活動しています。これ自体が普通のクラシックピアニストとはもう違うわけですが、例えばトリオではカプースチンのピアノ曲をジャズ風に演奏、あるいはリズミカルな要素を出してアレンジして演奏したりします。それもとても魅力的なのですが、一方でクラシックのレパートリーとしてピアノ協奏曲を普通に弾いたりもします。最近ちょうど彼とやり取りをしていたのですが、今年の多忙な演奏活動の合間に、ついにカプースチンの『ピアノ協奏曲』の録音を全部終了したということです。全6曲を録ったということですから、来年にはコンプリート・ボックスがリリースされ、まだ聴いていなかった『第1番』と『第3番』の録音が出るということですね。

一方で角野隼斗さんは、つい先日までアンコールでカプースチンを弾いて凄かったとかいう話題も入ってきていましたが、一転して昨日、彼の新しいCD「Chopin Orbit」がリリースされることが発表され、来年2~3月に国内ツアーをやることも決まったそうです。その新しいCDの収録曲というのが、もちろんショパンに敬意を表しつつ、このCDに収録したショパン作品のタイトルや内容に絡め、自作品を巧妙に配置していて(関連性を持たせて交互に配置)、もうこれ自体がとても芸術的でクリエイティブなことだと思いました。またこれほど新たに作曲していたというのも驚きではあります。

このようにカプースチンという作曲家が機縁となって、最初はおもにピアニストたちに強いインスピレーションを与えたとは思いますが、それが他の楽器とのコラボやアレンジの可能性を呼び起こしたり、自分でも作曲をしてみたくなったり、いろんな創造力を搔き立てられる演奏家たちが増えてきたように思います。もちろんカプースチンをオリジナルにそのまま弾くだけでも、その新しい音楽に刺激が与えられたり楽しい気持ちになったりします。それで若い演奏家たちの創造力が揺さぶられているということももちろんあるのかもしれません。

コンサートなど音楽のイベントのコンテンツを考える際に、普通にクラシック音楽を中心に考えるとしてもクリエイティブな観点を持つのはとても大事だと思います。今回の「カプースチン祭り」でも、もちろんオリジナルのカプースチン作品を中心に構成しつつ、限られた楽器の奏者たちで存分に楽しんでもらえるプログラムに仕上げられたのは良かったと思いました。


♪追加で「カプースチン祭り2025」の写真から…

西本夏生さんと(リハーサル時)↑

『ディヴェルティメント op.91』の演奏↑
左から大塚茜(Fl)、私(P)、金子鈴太郎(Cello)、赤木りえ(Fl)(敬称略)


終演後ロビーで(サイン会)

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