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カプースチンからの手紙【第19回】

[2006年12月20日]
「親愛なるマサヒロ!


長い間メールの返信ができなかったことをお許しください。
エチュードop.122について私が質問したのは、1曲目の真ん中に出てくるエピソード(十六分音符と三連符の箇所)は恐ろしく速く弾かなければいけないと思ったから。私はメトロノーム指示の「四分音符=176」で弾けるかどうかは確信がない。2曲目のエチュードに関しては、あなたが言った通りだ。「二分音符=104」はちょっと速すぎるね。

サーモン氏はソナタ15番を今年の4月か5月には録音したはずだ。もう1年半ほど前から私は彼にその件がどうなっているか訊いているのだが、彼は私のメールに返信してくれなかった。そしてそれ以来、私も書いていないし彼もメールを書いてくれない。だからそれからどうなったのか私にはわからない。例えば韓国のAhn-Trioの三姉妹は私のOp.126を9月に演奏したが、その作品は1年半か2年の間は誰にも見せないでください、と私は彼女たちからお願いされている。

ではごきげんよう。
N. Kapustin」


珍しく私が出したメールにカプースチンから3週間ほども返信がなかったのですが、ようやく上のメールが届いて前回のメールで私に質問された作品Op.122のことが言及されています。『2つの装身具のようなエチュードOp.122』と訳されているピアノソロ作品のことですが、この曲は私がこの年(2006年)の4月に世界初演し、カプースチン自身もこの翌年のCD録音のために準備している最中の作品の一つでもありました。なので、自分が作曲時に楽譜に書いたテンポ指示について、細かく検証している様子が窺われるわけです。ただ、この曲はピアノ作品としてもすごくレアな部類で、その後20年も経っていますがまだ世界で数名くらいしか演奏していないのではないでしょうか。だから、上のメールの内容も今でもすごく限られた人にしか役立たないことでしょう。
でも作曲家がどんなことを考えているか(特にカプースチンが!)を知るのは面白いと思います。カプースチンでさえ自分でCD録音するために本気で弾いてみなければ、楽譜に指示したメトロノーム指示が本当に妥当だったのかどうかは分からないということです。

その次の話題のジョン・サーモン氏はカプースチンにピアノ・ソナタを委嘱して、それが第15番となるわけですが、カプースチンにはその曲をCDに録音するということを告げただけで彼はその後メールを書いていなかったようでした。カプースチンも彼から情報が来ないのでかなり気を揉んでいたようですが、実際にはカプースチンの認識どおり、サーモン氏によってソナタ第15番は他のいくつかの楽曲とともにその年(2006年)の3~9月の間に録音されており、翌年にCDがリリースされます。

私がこの一つ前のメールでカプースチンに質問していたのは、その前年に作曲されたこの『ピアノソナタ第15番Op.127』は「そろそろ解禁にならないのですか?(=そろそろ楽譜を頂けませんか?)」というものでした。上の回答では残念ながら「まだすぐにはダメ」ということですね。
同様に『ディヴェルティメントOp.126』も上のアメリカ在住だったAhn Trioが委嘱したもので、委嘱したアーティスト自身がちゃんと世界初演をして、その後さらに少しの期間は誰にも楽譜を渡さないでほしい、と作曲家にリクエストしていたということです。私は「じゃあ、その2曲の楽譜を手にするまでにあと1年ほどは待つことになるかな」と思ったことを覚えています。

でも私は委嘱作品以外の楽譜はほぼすべてカプースチン本人からコピーを送ってもらっていたわけで、今思い返すとなんと贅沢でありがたい身分だったかと思います。

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