Site Overlay

ピアノがうまくなるコツ -『頭をよく働かせる』(1)

昨年は本を出版したこともあって、「もうこれで良いかな」と思っていましたが、もともと「日記風」ということで書き始めた「ピアノ学習者へのヒント集」ですので、これからも肩肘張らずに少しずつ書いていこうと思います。

ピアノの練習に一番大切なことを一つだけ選んで挙げるとすれば、これは「頭をよく働かせる」ということに尽きると思います。

効率の良い練習法のところでも少し触れていますが、漫然とピアノを練習しても上達が遅いということは誰でもわかるでしょう。毎日、ただ指だけを動かしたとしても練習は全然進んでいないのと同じです。目的意識を持って練習すること、いま現在自分が奏でている音楽に何か新しいものを発見しようと努めることが大事です。

自分が「何を」やっているのかを判らずに演奏しているというケースは、小さな子供にはよくあることでしょうが、ある程度の年齢になってもそういうことがあるように思います。作曲家が何を求めてその曲を生み出したかが音楽的に感じ取れていなくてはいけません。
例えば、「ソナタ形式」などの形式というものをは何のために知る必要があるのか、それぞれの主題がどういう性格で、展開部で何が始まっているのか、なぜ再現部があるのか、再現部では提示部と比べて何が変化しているのか…、こんなことをすべてを頭で理解していること、又は言葉で説明できなくても音楽的にそれを理解していることは必要です。実際、これは理解しているのとしていないのとでは演奏に雲泥の差が出てくるわけですが、なぜそうなるのか。

物事すべてにおいて、状況がよく判断できているということはとても大切です。
例えば、自分の人生に置き換えると、今自分はどのあたりを生きているのか。何の目的を持ってどういう生活をしているのか。例えば全生涯を80年間生きると仮定して、今どういう時代なのか、どの国にどんな時代に生まれているのか、いま自分は何を目的として持っているのか。10代なら、学校で一生懸命に勉強しなくてはいけない。受験生なら目の前の受験のために一生懸命にやっている、とか、20代ならもう自分の職業を確立するために具体的な活動を展開しているとか、30代なら、さらに自分の長所短所をきちんと見極め、自分の強みを最大限に生かしてより有意義な人生を生きるために奔走している、とか…。今自分が一体何をしているのか、これをよく理解して生きて行くのと、何も考えずに漫然と毎日を過ごすのとではまったく違う人生になると思うわけですが、演奏するということもそれとまったく同じです。1つの音楽も一個の小さな出来事であったり、一つの人生に例えられるような大きな曲だってあります。

頭をよく使うということ以外に、感覚的に感じること、また身体で感じることの中にも大切なものがあります。芸術的なことに関わる人にはそのような特性も重要かもしれませんが、やはり頭をよく使うこと、常に目的意識を持って事に当たっていること、何かを積極的にやっている時は、頭で考えることなしには何も進みません。だから、楽譜を読む前にその音楽を理解しようとすることもとても大事です。

「考えても考えても分からない」という人は、おそらくまだインプットの量が少ないのだと思います。学生時代は、とにかく多くを吸収すること。良い音楽をたくさん聴くことから始め、また有益な情報、知識を常に求めることも大切ですね。

上にスクロール
Translate »