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メールでのやりとり

例えば、フルートソナタのフルートパートで、ピアノスコアによればある音にフラットが付いているのに、フルートのパート譜には同じ音に何も付いていなかったりする。「どちらが正しいのでしょう?」というような質問がいくつも必要になり、メールを書き続けています。それに対して、ある部分は「それはピアノ譜が正しい」とか、「その音はパート譜のほうが合っている」などと予想しない答えが返ってきたりします。だから、すべて作曲者本人に訊かなきゃダメなんですよね。ある作品の音源を初めて発表する際には、作曲者とやりとりができる場合はだいたいこのようになるものです。録音間際になって、最終稿が確定するような場合もよくあります。

私とカプースチンの場合は、東京とモスクワという離れた場所にいながらにして楽譜の編集を一緒に行った経験があり、暗号というか略語のようなものも含めて、よくわかり合える便利なコミュニケーションの方法を編み出したのです。そのお陰で、どんな細かい質問でも大丈夫です。

こんなやり取りもありました。
「○ページ○小節のこの音はフルートの譜面ではソに何も付いてないのですが、ピアノスコアのフルートパートにはソにシャープが付いてます。どちらが正しいですか?」と訊くと、カプースチンは、「あ、そこはピアノ譜のほうですね。でもそれより重大な間違いを同じ小節に発見してしまった。2拍目のピアノの右手の和音(ラ・ド・ミ・ラ)には4つの音すべてにナチュラルが付いているけど、ドに付くべきはシャープの間違いだった」って、あの、それじゃここの和音はマイナーからいきなりメジャーコードになってしまうのですけど…。いいんですか?(笑) 念のために、「そうすると、同じ小節内の最後の拍の和音にもそのシャープは生きるわけですか?(まさかと思うのですが…。)」「もちろんです。」「えーっ?!」というようなやり取りを、今後録音直前まで続けていく可能性もあります。また、作曲家本人ですから、「やっぱりここはこちらの音のほうが良い」などと、現時点での最良の変更を加えてくることもあります。創造者というのはみんなこのようなものなのです。

そういえば、私が5年前にカプースチンの作品集2巻を録音する時には、楽譜も同時に編集したのですが、楽譜にカプースチン本人による赤ペンの訂正が入ってきて、私の手元にそれが国際郵便で届いたのがその曲の録音の2日前でした。急いで音を変えて練習しなければいけない羽目になったのを思い出しました。一部すごく複雑なリズムに変更された曲もあったりして、けっこう苦労しました。

今回はこのまま乗り切れると良いのですが…。

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