気がつくとブログを1か月以上も更新せずにいました。そろそろ2020年が終わろうとしていますが、まだまだ世界は先が見えない感じが続きそうですね。
辻井伸行君からは一昨日無事にコンサートツアーも終わったと連絡を頂いて、また昨夜は彼のここ数年間の活動にスポットを当てた3時間ほどにわたる番組がBSフジであるということで、ちょうど観ることができました。「そうだ、アイスランド公演時に突然彼がアップライトピアノでカプースチンのエチュードを弾いたというシーンもあったな」などと、あらためて驚いたりしていました。
また別ルートで、1月1日の夜にはBS朝日の恒例の辻井君の2時間ドキュメントがあるという連絡も受けました。以下のサイトですので、ぜひご覧になってください。
https://www.bs-asahi.co.jp/tsujii2020/
今年は音楽家の皆さんにとっても厳しい年となりましたし、来年以降もまだまだ予断は許さないでしょう。ピアノを勉強している音大生たちのことを考えたりしても、今後のピアニストのあり方というか、生計の立て方と言ってはおかしいですが、自分の「売り方」がどうあるべきかいろいろ考えてしまう今日この頃です。
演奏会のような場は今後ももちろん存在していくことは確かでしょうが、今年のコロナ感染拡大の影響でまだ状況はいくらか変わっていくかもしれません。音楽家には演奏するということが必ずついてくるので、人と人との触れ合いがなくなっては基本的には成り立たない職業なのですよね。
ピアニストは今後どうあるべきなのでしょうか。これを最近ときどき考えています。
才能豊かな若いピアニストたちが最近多く見られるようになってきました。これは特にこの日本でも顕著ですが、うれしい現象ではあると思います。ただ、ライバルもたくさんいるということで、若い音楽家たちは自分の生き筋をしっかり見ていかなければいけませんね。特に今後クラシック音楽はどうなっていくのか…。
現在活躍している若いピアニストたちは、即興演奏ができる人が多いのは確かです。この傾向は今後ますます増えていくのではないでしょうか。即興演奏ができるということは、はっきり言えばある種の作曲ができるということです。先日カプースチン追悼コンサートで紹介した角野隼斗(カティン)さんもそうですし、彼の周辺に存在する若手アーティストたちも似たような独自の活動をしています。このブログで紹介した紀平凱成君などもカプースチンを弾きながら自作をどんどん生み出しています。
現代において作曲したいと思っている人は、おそらく人から教わるだけでは無理でしょう。音大でクラシックを勉強するだけではきっと足りないですし、例えば今はもうジャズをかなり本格的に弾けるクラシックピアニスト(この言葉自体が死後になるかもしれないが)も世界中に増えてきました。ジャズだけではなく、あらゆるポピュラー音楽に通じていることも必須という時代になったように思います。いろんなジャンルの音楽を知っていて、自分が良いと思うものはジャンルを問わずすべて吸収し、その上に新しいものを作るというのが作曲するというのが発想の原点でしょう。
その中で、私たちが音大で勉強している(&教えている)クラシック音楽はどんな位置づけになるのか。少なくとも、おそらくそれだけでは売っていけない時代になっているとは思います。かと言って、自分の好きなジャンルの音楽だけにすごく通じているというのでも、高いスキルは目指せないだろうと思います。あらゆる音楽に興味を持ちつつ、良いと思うものは全部自分に取り入れて、その中で自分の強みを出していくというのが今後の音楽家のあり方ではないかと感じています。どんな音楽家になるにせよ、おそらくクラシック音楽は今後も教養としては絶対に必要なものだと思います。この300年ほどの西洋音楽の素晴らしい歴史は、知識として、あるいは実際に宝庫とも言えるそれらの音楽を知り(聴き)、勉強していることはものすごい材料というか知識や教養になると思います。音大ではそれを勉強することはできますし、それもすごく大切なものだと思います。ただ同時に、今後はそれだけではピアニストとしてはやっていけないとも思うわけです。
これまでは、「クラシックピアニスト」という肩書でやっていけたのです。確かにそういう時代でした。しかし今後はどうなるか…。現在活躍し始めている若手ピアニストたちには特殊な才能を持った人も多いと思いますが、それだけではなく、彼らは新しい時代に必要になるスキルがどんなものになるかの可能性について教えてくれていると思いますので、視野を広く持って自分の将来の可能性を考えていってほしいと思っています。