今回のペルージャ音楽祭では、外国からの生徒たちにたくさん会いましたが、その中から印象深かった人を紹介してみたいと思います。
セミナーを通じて目立った人は何人かいました。最初の日からいきなりカプースチンのエチュードを鳴り響かせていたCharles Lu君なども気になっていましたが、アメリカから来たJoshua Chandra君が最初から私にはかなり目立っていました。見かけは欧米人っぽくないので国籍は詳しくは知らないのですが、魂や精神は明らかにアメリカ人のそれで、もちろん完璧な英語を話すのですが、その喋り方や風貌は私の表現で言えば「東大ピアノの会」あたりにいそうなタイプで、最初からある種の親近感を感じていました。
彼は、初回のエチュード・コンサートでタウジヒの演奏会用エチュードOp.1のNo.2を弾きました。多くの人がショパンなどを弾く中、彼は「すごい良い曲。だけどたぶん誰も知らないだろうな。僕の演奏でびっくりさせてあげよう」というような感じで張り切っていました。なかなか積極性のある奴だな、面白いかもしれないと興味を持ちました。ちなみに、この曲はたしかに珍しい曲だしあまり誰も弾かない曲ではあるのですが、日本では音楽之友社から高久暁さんの校訂で楽譜が出版されています。
たまたま今回、このJoshua君のレッスンをする機会に恵まれ、そのタウジヒのエチュードの奏法や表現にかなりアドヴァイスしたり、彼が9月にアントン・ルービンシュタインコンクールを受けるために準備しているという数々の曲をたくさん聴かせてもらいました。彼は、コンクールを受けに行くということを皆に宣伝してアピールしているし、ちょっと自分に酔っている感じもあって、私はこういう性格の人はとても好きです。
そして彼は、ちょうどそのレッスン当日の夜の演奏会の最後に自作のグランドワルツ(?)を披露したのでした。しかも、エチュードコンサートの時も、弾く前に一言喋って自意識過剰なアピールをしたのが印象に残っていたのですが、この時も「それでは皆さん、今日この演奏会の最後を飾るのは僕の自作の曲、この曲を弾くのはアメリカ以外の地で今日が初演となります…」というような感じで挨拶をして、大げさに演奏を始めていました。自分の曲だからということもあるだろうけれども、とても素晴らしい演奏を聴かせてくれました。作曲の才能もあると思います。
昨年は、Mauricio Arias君というピアノ協奏曲を作曲しているという人をブログで紹介しましたが、彼はその後、その曲を実際に公の場で初演したようです。その演奏がYoutubeにもアップされています。そして今年は、このJoshua君みたいな才能に満ち溢れた若者もいました。きっと彼も将来大きなアーティストに育っていくのでしょう。世界で大活躍している姿がすでに目に浮かびます。
ほかに、初日に私に声をかけてきたと書いたLei Li君も自作曲を演奏して披露していました。彼は一足先にペルージャを経ったのですが、2日後に彼ら一行6人が中国へ帰る時に、たまたま電車乗り換えのために私がローマの空港に立ち寄った時に偶然会って、感動の再会をしたりしました。お蔭で彼らとの記憶がさらに定着しました。今回、中国や台湾から来た人たち、またインドネシアから来た参加者たちともかなり仲良くなりました。
日本から連れて行った私の生徒たちも、そんな人たちとたくさん友だちになって帰ってきました。同じピアノを一生懸命やっているという共通点だけで、世界の多くの仲間たちと親しくなれるって素晴らしいですね。
今回は、ピアノの参加者は120人ほどはいたようですが、私が実際にレッスンできたのはたぶん50~60人くらいです。すべての人と深く触れ合うことはできませんでしたが、でもすべてはとても楽しい経験でした。
今回レッスンした場所の一つSan Martino