今月20日に発売されたばかりの「ムジカノーヴァ」(音楽雑誌)12月号に、今回は暗譜に関する特集ということで、「暗譜の事故多発地点~その原因と対策」というタイトルの私が書いた文章が載っています。ご覧いただければ嬉しいです。
今回の原稿の内容に関連して、ピアノのための「良い練習の仕方」を他の観点からあらためて考えてみたので書いてみたいと思います。
暗譜も確かに頭を働かせなければできないものですが、演奏そのものにもやはり頭を使うものです。実際には、ピアノを弾く人はたくさん練習しなければいけないので、あまり頭を使わなくても反復練習しているうちに弾けるようになってしまいます。だから、どちらかと言えば感性だけで弾いている人も多いと思います。練習の際にも、頭を使うよりは指の練習をしたり、「弾き込む」ことを重視している人が多いと思います。感性で弾いている部分が9割で、知的な部分、頭を使っている部分が1割という感じでしょうか。あまり意識しなければそうなるのではないかと思います。私の考えでは、これを逆にすればもっと練習の効率も演奏自体も良くなると思うのです。もちろん、曲が弾けるようになったら音楽に没頭することも必要なので、必ずしもピアノは頭脳だけで演奏するべきものではないと思います。でも、練習の際にはやはり9割は頭の方を働かせようと意識すると、その効果はとても大きいものです。
頭を働かせるとは具体的にどういうことでしょうか。
ピアノを弾こうとすると、まず譜読みをするわけですが、最初は音やリズムを正しく読んで実際に指を運んで弾けるようにしていきます。そしてその次の段階で、どのようなことに注意して練習するべきか、大事なことを挙げておきます。
①曲の構成を知り、細かい音に至るまで頭で理解して弾くこと。
②アーティキュレーションを正しくできるようにすること。その際に、各指の位置や手首の角度、手のあらゆる部分を正しく使えているか=そのフレーズにふさわしい力のかけ方と抜き方ができているかを意識すること
③ハーモニー進行に意識を向けること
④指使いを意識して弾くこと。
一般的にピアノ学習者に軽視されていると思われることを4つ挙げてみました。上の4つについては詳しい説明が必要だと思いますが、まずは項目だけ書いておきました。
これらについて、また次回詳しく書いていきたいと思います。
暗譜に悩んでいる人にとっては上のことは特に重要で、これらは自分で練習する際に普段から意識すると良いでしょう。その上で、あとは本番に向けての準備の仕方や、ステージ上での気持ちの持ち方などいろんな秘訣があるかと思います。
最新号ムジカノーヴァの論考と合わせて参考にしていただけると嬉しいです。
