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我が門下生たち

一般に音大でピアノを専攻しているという人は、だいたいクラシックのソロ(一人で弾く曲)の標準的レパートリーを主に勉強していることが多いと思います。そして腕を磨いてコンクールを目指したりするのが普通の感じかと思うのですが、私の門下生にはそれ以外にも面白い個性を持った人たちが多く集まっているように思います。他の門下生はどうなのでしょうか。

例えば、大学の試験等に必要な曲以外はもっぱらカプースチンしか弾かない人(笑)、こういう人も私は決して嫌いではありません。また、室内楽が好きでたくさん伴奏している人。これは私自身もそうだったのでよく理解できます。あるいは、作曲がしたい人。実際にできる人もいます。ピアノの曲や他の楽器編成による作品を創ってオーディションに通ったり、作品を学内外で発表して仕事として通用し始めている人もいます。
もう一人、これは珍しいパターンだと思うのですが、ローランド主催のコンクールに出てポピュラーやジャズを弾いている人がいます。しかも予選を通ったため、現在は本選の演奏会のためにジョン・コルトレーンのバリバリのアップテンポのジャズを練習中です。これはさすがに珍しい例ではありますが、私は面白がって真面目にレッスンしています。ジャズ・トリオをやる機会さえ滅多にありませんが(私自身も一度もない)、その学生は次のステージでビッグバンドと初めて演奏するために必死に練習しています。難易度が高い曲で、徹夜で練習しているそうです。確かに曲を聴くと、クラシックとは違った難しさがあって「こりゃ大変だ」と思いました。何が大変かと言うと、ドラムの速いテンポのビートを聴きながらピアノのパッセージを弾くのですが、ドラムの音は裏拍しか聞こえない場合もあると思われます。パッセージ自体が難しい上に、完璧なノリとビート感が必要とされるのです。こういうのはクラシックの演奏では通常あり得ない経験です。私は数年前にカプースチンのピアノコンチェルト6番の初演の時に同じような感覚を経験したのですが、ベースとドラムのビートに合わせて超高速のパッセージを弾き続けるのがあれほど難しいとは知りませんでした。

というわけで、同じピアノ科でありながら、皆それぞれ個性的に自分の道を進んでいて面白いです。もちろん大学の実技試験だけは真面目にこなさなくてはいけませんが、それ以外は将来のために自分の好きな方向を耕していくというのは大事なことだと思います。

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