先日のカワイ名古屋での公開講座で私の「エチュードについての考え方」をまとめてみました。
結論的には、「チェルニー30番練習曲をひととおり終わった人なら、もうショパンのエチュードが(易しいものから順番に)弾ける」ということを言う先生も最近は多いのですが、私もまったく同感です。現代では、やはりピアノの勉強においてもあらゆるジャンルのレパートリーを数多くこなさなければいけないので、エチュード(練習曲)としてやるならチェルニーは30番練習曲のみで十分。私はエチュードを「ショパン以前」と「ショパン以後」のものに分けて考えますが、少なくとショパン以前のエチュード(チェルニーはショパン以降にも生きたがそのスタイルから「ショパン以前」とみなす)に関しては、ほぼ何もやらなくても大丈夫という持論を展開しました。ただ、知識としてはもちろんクレメンティの「グラドゥス・アド・パルナッスム」やモシュコフキのエチュードをいくつか知っておく(弾いておく)くらいは良いでしょうし、他のエチュード(ブルクミュラー18、12の練習曲、クラーマー等)について少し知っておくくらいは必要かもしれません。教える側にとっては、もちろんひと通りは楽譜を持っていて良いかと思います。
テクニック的な問題を解決するには、私としては純粋に今も「ハノン」を勧めたいと思います。ただし、講座の中でも言いましたが、ハノンをちゃんと目的意識を持って使いこなせるのは高校生から大学生以上だと思います。良い先生についていれば、それ以下の年齢の人でも良い練習はできると思います。何も考えずに番号だけこなしていくのはあまり意味がないやり方です。
私が勧めるハノンの練習方法はちょっと変わっているのですが、それはまず「中くらいのテンポで弾くこと=1~20番なら4分音符=60くらいで十分」「mfでくらいで弾くこと」「疲れたらいつでも休み、またすぐ弾き始める~その方法で1番から60番まで弾くこと」などがありますが、まあ最後の「全部を弾く」というのは実行しなくても構いません。ただ、『重音のトレモロ』と『オクターブ』は本当は極めて重要で、それらが最後の50~60番に集中しているのも事実なので、最後のほうはすべてを省略したらあまり効果は望めないと思います。
その上で、ハノンを練習する際に「ここに注意して練習すればとても効率的で非常に高い効果が望める」として紹介したのは、次の5点です。
①指先に注意(内側に引くように使う)
②打鍵した後すぐに脱力をする(打鍵後すぐに手首を上方へ抜き脱力を確かめる)
③腕に注意しながら弾く(力を入れて弾くと腕が固まっているのですぐわかる)
④音を揃える(特に第一音の両手の音が揃わない、重音の場合もすべての打鍵時にすべての音を揃える)
⑤音楽的に弾く(フレーズ感を持って弾く=レガート中心、当然かなり微妙な強弱表現は伴う)
これらに注意してハノンの1番から60番までお好みで(自分に必要だと思われるものを抜粋して)毎日弾くと見違えるようにテクニックが変わります。数ヶ月も経てば、もう曲の中で部分練習というものをしなければ到底ちゃんと弾けなかったという自分を思い出すことができなくなります。
先日の講座では、西川凌君(大3)と椿田和樹君(中1)という非常に才能に恵まれたお二人がモデルレッスン生として登場して、二人ともそれぞれショパンのエチュードを見事に弾いてくれました!