ウィーンに長く住んでいた人は、皆「ウィーンは私の第二の故郷です」とはよく言うことですが、私たちも7~8年住んでいたのでとても愛着のある街なのです。ここ最近はずっと訪れていなかったのですが、「やっぱりウィーンはいいな~」とあらためて思いました。私たちが住んでいた頃からずっとウィーン在住の友人たちからは「ぜひまたウィーンに帰ってきてくださいよ」などと言われたりしました。
昨晩はウィーン楽友協会「黄金のホール」(ムジークフェライン大ホール)で指揮者の佐渡裕さん率いるトーンキュンストラー管弦楽団の演奏会があり、辻井伸行君がラヴェルのコンチェルトで客演しました。6月2日からウィーン以外の町で2回、ムジークフェラインで一昨日に1回あって、昨日が全4回公演の最終日でした。
プログラムはハイドンの交響曲から始まり、2曲目に辻井君が登場してラヴェルのピアノコンチェルト。第1楽章は超快速なテンポで、第2楽章はゆったりと歌い上げ、第3楽章は壮絶な推進力で佐渡+辻井ならではのエキサイティングな演奏が展開されました。
そして、コンチェルトの後のソリストのアンコールで辻井君が弾いたのは、なんと・・・カプースチンのエチュード(Op.40-1)でした!もうビックリです。ウィーン楽友協会の大ホールという世界の大舞台であの曲を突然披露するとは!
前日に辻井君が私に「今回はソリスト・アンコールを弾かせてもらえるんですよ」と言うので「あー、それは良かったね。何を弾くの?」と訊くと、「いえ、それはまだ決めてないです」というので、「あーそうだね。いつもそうだものね。」と私は返事をしてそのことは忘れていたのです。なので、アンコールが始まった時はまったくの不意打ちで、最初の1小節を聴いても一瞬何が始まったのか分からなかったほどです。その曲を聴いていた約2分間は本当に心臓が飛び出そうでしたが、ひょっとしたら辻井君から私へのプレゼントだったのかもしれません。カプースチンのエチュードを弾き切った瞬間、会場は異様に沸きました。それも本当に嬉しかった。私自身も我を忘れて声を上げてしまいました。
そして、それで終わりかと思ったらアンコール2曲目としてドビュッシーの『月の光』を弾いたのです。これも効果的な選曲でした。というか、普通はソリスト・アンコールは1曲しか弾かないものですが、最初からこの2曲を弾こうと決めていたのかどうかを知りたかったので後で辻井君に訊いてみました。すると、実はカプースチンを弾いた直後に舞台袖で佐渡さんに「一昨日アンコールで弾いた『月の光』も聴きたいなあ~」と言われて、急遽2曲目のアンコールとして弾いたということでした。(ちなみに全4回公演の内、カプースチンを弾いたのは昨日だけだそうです。)

熱気に包まれ、ウィーンの聴衆たちはなかなか会場を去ろうとしませんでした。

サインの対応で最後まで忙しい佐渡裕さん
日本からのファンも多かったようです。
4日間の公演がすべて無事に成功に終わり、エイベックスのスタッフも大満足にて日本への帰路につきました。私たちは残り少ないウィーン・ライフをもう少し堪能してから帰国します。



