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効率良くさらうために必要な考え方

 練習をしなければいけないのに、気分が乗らない時というのがあります。また、体調が悪い時もあります。気分良くさらっている時と、気分が乗っていない時では、おそらく得られるものは10倍くらいの差がつくのではないかと感じます。特に、疲れているときは、たとえどんなに切羽詰っていても、ピアノに向わず休むのが一番です。そういう時は休んで良いのです。時間を惜しんでも練習したいという気になる人もいると思いますが(“練習病”保持者のみですが)、弾きたい気持ちになるまで休んだ方が良いのです。少し横になって疲れが取れたら、また弾きたくなる時が必ずくるのです。また、極度に眠い時もやっぱりダメですし、病気の時も練習はできません。精神も肉体もともに健康で、感覚がクリアーな状態でこそ練習がはかどるのです。身体とはそのように贅沢なものですから、そういう良い状態を意図的に作ることが大事です。

 まあそうは言っても、学校に通っている人たちは、そんなことは言っていられないかもしれません。拘束時間が多いですから、少なくとも自由になる時間は、すべて練習に当てないと練習時間が取れない人もいるかもしれません。確かに、若いうちは、がむしゃらにやっても体力は持つでしょうが、しかし能率を上げるためには、やはり頭は使う必要があります。自分にはテクニックをまだ磨く必要があると思う人は、毎日それなりに長い時間を練習に充てることは欠かせませんが、基礎的な手ができてくると、もう長時間さらう必要はないとも言えます。“練習時間を減らして弾ける方法”を考え出す必要があります。「長い時間さらえば安心」と思って、無駄に長時間練習している人は多いと思います。もちろん、プロのピアニストたちは、次から次へと大きなプログラムを準備しなければなりませんから、結果的に1日10時間の練習が必要になる場合もありますが、基本的にはピアニストの人たちは、「いかに短時間で密度の高い練習をするか」ということに心を砕いています。ピアノを本気で練習する人は、自分の“気分”と“体調”というものに、特に敏感でなければいけません。身体の状態の波みたいなものがあって、調子の良い時に集中して1~2時間さらえば、10時間分の練習に相当することもあります。また、逆に調子が悪い状態でやっても、得られるものがゼロのこともあります。特に、大学生以上になったらそういう考え方は必ず必要になってきますので、心に留めておいてください。(強靭な体力を持っている人には、まったく関係のない話かもしれませんが…。)

 もちろん、時間があり余っていて、1分でも長くピアノを弾いていたいという人は、以上の話は関係ありません。どうか、ピアノを心から楽しんでください。しかし、ときどきアマチュアの方でも、忙しい本業の合間に、ものすごく限られた練習時間でレヴェルの高い演奏をする人もいるのです。だから、譜読みが正確で早いことも貴重な能力です。譜読みが粗ければ、結局あとで余計に時間がかかってしまうのです。効率よくさらえば、それだけ短時間でレパートリーを増やすこともできます。まず、身体と頭脳の調子が良い時に集中して練習すること、そして実際に頭をよく働かせること、楽譜をいつも深く正しく読むこと、などいろんな工夫が練習の能率を上げると思います。

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