モノが溢れる時代になったからこそ、逆に勉強の仕方がわからなくなったという人もいるかもしれません。
例えば、自分が練習しているピアノ曲を勉強するのに、まずどのCDを聴いたら良いか、選択肢がありすぎてわからない、ということがあったりするでしょう。それで、手っ取り早くとりあえずユーチューブを検索したりします。
あるいは、ある事項についてどの本を調べて良いかわからない時は、やはりネット上でウィキペディアだけを読んで終わりにするという人もいるでしょう。
そのように、「教養」になる前の「情報」の段階で終わってしまう人もいます。いや、情報にもなっていないかもしれません。特に、ちょっと専門的なことになると、ネット上の情報だけでは現在でもまだ大いに偏りがあると思います。ほとんど頼りになりません。
あるいは、例えばある作曲家のことを調べるならどの本から読むべきか、そしてその本をどのように入手するか、ということにちょっとした努力が必要な時代になりました。昔であれば、出版されている本を買ったり、図書館で借りたりして全部読めば良かったわけです。ある意味で重要な本、良書しか存在しなかったので楽だったのです。でも現在では、例えばベートーヴェンについて知りたい読みたいと思った時に、日本語で読める伝記だけでも数十冊以上はあるでしょう。有難い時代ですが、逆にいつでも読めると思って1冊も読まない人、あるいはよく考えないで1~2冊読んで終わってしまう人などがいます。
CD等についても同じで、録音がたくさんありすぎて、じゃあ名盤と言われるものから聴こうと思って、本や雑誌や口コミによって得た情報をもとにお店へ行っても、運良く在庫があるとは限らない。また、CDを店頭で買うというスタイルは、この先さらに減っていくことも考えられるくらいです。
例えば、ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)はとても重宝するサイトです。それほど高くない年会費で、ナクソスほかいくつかのレーベルの広範な音源を聴くことができます。ただ、聴ける音源にもちろん限りはあるので演奏家も限られてきますが、大きな利点もあります。それは、すでにかなりマイナーな作曲家や作品までひととおり網羅しているので、ある種の百科辞典的な役割を果たしているところです。また、有名曲であれば複数の音源を聴き比べることもできます。私などはピティナの会員の特典の一つとしてNMLを無料で聴けるので、ときどき利用させていただいています。同時接続の人数制限はありますが、ほとんどの場合は問題なく、とても重宝しています。
CDや書籍は、もしほしいアイテムがはっきり分かっていて現在も出版されているという場合は、楽器店や書店で買うのではなくネットで買うのが一番でしょう。商品にアクセスするための交通費もかかりませんし、必ず手に入るということがわかるし、時間的にも効率が良いわけです。
ほかには、音大等の図書館を利用する手も大きいです。ここには、少なくとも名盤や名著と言われる音楽関係の文献はほとんどあるはずです。逆に、出版されたばかりの新しいアイテムはほとんど存在しませんが、それ以外のものはかなり検索できます。図書館は、うまく利用して将来の自分の仕事に役立てれば、何百万円かそれ以上の価値を生み出すほどのものですが、音大生は意外にそのことに気がついていないようです。なんともったいないことかと思いますが、勉強する情熱に欠けているようにしか見えません。図書館の効果的な利用は、学生たちにももちろんプロの研究者たちにも絶対にはずせないものだと思います。
と、ここまで書いて、図書館に延滞している資料を持っていることに気がつきました。ヤバいヤバい…。
すぐに返却しまーす!