音楽の勉強の話の続きですが、私が子供の頃などは、ショパン一つとっても、存在するレコードなどはできるだけ多く聴こうと努力していたと思います。もちろん、当時は音源自体が少なかったということもありますが、中学生の時に親に買ってもらったLPレコード20枚組・全232曲のショパン全集を擦り切れるほど聴いた覚えがあります。また、ショパンの楽譜はすべて手に入れて、最終的に20曲の歌曲以外のショパン作品はすべて譜読みしました。
そういうハングリーな感じがありましたが、今考えてみると、これがけっこう役に立っています。「ショパンは全曲知っている」という自信があって、これが力になっています。だから辻井伸行くんがショパンコンクールを受けると言った時も、躊躇はあったけど「やれる」という自信もあったのを思い出します。
だから専門知識も、突き詰めればもちろんそれなりの力にはなります。でも、やはりそれだけでは足りなくて、音楽家もかなり広範囲に勉強しなければ、一般社会で認められる活躍はできない時代になったと思います。そのことに若い人たちは早く目覚めなくてはいけません。
日本には、なかなか海外で通用するほどの活躍ができる人がまだまだ少ないように思います。知識や教養においては、明らかに劣っているという感じがして、もう少し堂々と世界に出られる人が多くなっても良いと思います。
例えば演奏家を目指すという人であれば、海外に国際コンクールをただ受けに行くというだけではもの足りなくて、やはり対等に仕事ができるレベルの人がもっと出てこなければいけないと思います。でもそのコンクールさえも、海外にまで受けに行くということを現実的に考えている学生は少ないのも事実です。かなり実力のある人でもまだまだそんな感じで、とても国際的とは言えない感覚で生きている若者が多いのもちょっと情けない感じがします。
音大生は、実技を磨くと同時に、卒業前の段階で視野を広く持ってたくさん勉強していくこと。学生であるうちに自分の能力の可能性を探り、より自分に合った分野に広く進出していこうという気持ちが大事だと思います。それをしない人は、なかなか世の中に出られないでしょう。
やはり日本発で、もっともっと世界に太刀打ちできる人材を輩出していきたいものですね。音楽分野に限らず、ぜひそうなってほしいと願っています。