今日は我が教室のピアノの発表会の日でした。
会場は例年と同じく、もと私たちが住んでいた埼玉県の和光市民文化センターで、考えてみればもう14回目となるのでした。
今日は、小学1年生から大学院生、社会人までさまざまな個性を聴きましたが、一人一人が比較的長い演奏時間を持つことができたと思います。
皆さん、本当にお疲れ様でした。まだまだこのあと本番が続く人もいるので頑張ってください。
話は変わりますが、ある曲のタイトルについて複数の方から質問を受けたのでここにメモしておきたいと思います。それは、プロコフィエフの「4つの小品」作品4の中の『悪魔的暗示』というタイトルの曲です。私が先日ブログに、このタイトルは誤訳だと書いたことで、では本当のタイトルはどんな意味なのか?、ということを当然知りたいという熱心な読者が複数いました。メールでも訊かれたし、今日は熱心な社会人ピアニスト氏に訊かれました。確かにインパクトの強い曲だし、名曲でもあると思うので気になってしまうかもしれません。
ロシア語では、”наваждение”(ナヴァジデーニェ)というタイトルで、英語では”obsession”に当たるでしょう。私が持っているいくつかの露英辞書の中には”delusion”の訳もありますが、意味は本来「妄想などに取りつかれること」「妄念」という感じ。ロシア語からの和訳では、確かに「魔の誘い」「(魔のたくらみによる)幻惑」などという訳も書いてあることはあるのですが、結局「何か(“悪いもの”というニュアンス)に取り憑かれている状態」を意味する語です。これが、英語で”Diabolic suggestion”となってしまい(フランス語訳の”Suggestion diabolique”から来た可能性大)、日本語で「悪魔的暗示」になってしまいました。
でも、意外にこの訳はけっこうインパクトあって引き込まれる感じがあるので、良かったのかもしれません。この曲が有名になるきっかけになったとも言える可能性があります。
私が子供の頃、あるロシア人ピアニストがテレビに出ていて、アンコールにこの曲を弾いたのですが、テロップに出たこの不思議なタイトルを見て「何だろう??」と目が釘付けになって、音楽に完全に引きずり込まれ、強烈な印象を持ったのを覚えています。そして二度とこの曲を忘れることはなかったのも事実。タイトルの威力は大きいのです。ちなみに個人的には、この曲かなり好きです。
曲のタイトルの誤訳が最近の研究でわかってきたというケースはいくつもあります。
ピアノ曲で知られている有名なものとしては、リストの超絶技巧練習曲で長年親しまれてきた「雪かき」のタイトルは「雪嵐(ゆきあらし)」。また、エチュードの「森のささやき」も「森のざわめき」のほうが正しいとされました。どちらもフランス語とドイツ語に深く通じていなかった人が訳してしまったのだろうと考えられています。でも、今頃になってそんなことに気がついても、日本語の語感がまったく変わってしまうのでもう誰にも変えられないのが現状ですが…。
ところで、上にロシア語の文字も使って書いてしまいましたが、どのブラウザでもちゃんと正しく見れるのだろうか??