Site Overlay

作曲家カプースチンの現在の位置づけは?


先日とあるコンサートのために書いたカプースチン曲目解説の原稿をようやく入稿し、また世界のあちこちでの最近のカプースチン演奏の反響などを聴いたりしてある種の感慨に浸っているところです。

というのは、1999年頃にカプースチンを初めて知ってからもう25年もカプースチン演奏・研究を続けてきたのだな~と。自分がやってきたことでカプースチンに関することを振り返ってみると、カプースチン全161作品のうち45作品以上の世界初演や8枚のCD録音、全音やヤマハやショット社から100点以上の楽譜の校訂・編集をし、解説を書き、公開講座やレクチャーも200本以上やりました。カプースチンの祭典やイベントを30本以上企画し、生前のカプースチンにも6回会いに行きました。本も書きました。

それでどれだけ広がったかと言うと、もちろんカプースチンの音楽が素晴らしかったからですが、少なくとも世界でたくさん演奏されるようになったと思います。ちょうど2~3日前にはスイスのヴェルビエ音楽祭で辻井伸行君がカプースチンの『8つの演奏会用エチュード』全曲を含むプログラムでリサイタルをして、聴衆からの「カプースチンが凄かった!」という反響が私のところにも聴こえてきました。配信もあったそうですが、私は残念ながらリアルタイムで聴けませんでしたが。そして同じ時期には角野隼斗(かてぃん)さんもスイスの音楽祭で本番があったようです。彼も断続的にカプースチンの演奏をSNSなどにアップしているようですからときどき気にかけています。

来たる8月30日夜の東京交響楽団のサントリーホール大ホールの公演は、なんと「カプースチン・スペシャルナイト」というコンサートで、オール・カプースチンのプログラムで行われます。これも画期的なことですよね。出演者は前述の角野隼斗さんとサックスの上野耕平さんがメインアーティスト。お二人とも私にはすでにお馴染みですが、この日はソロ、室内楽編成の曲、オーケストラと協奏曲というような内容で、驚くべきことはチケットが発売されてすぐに完売してしまった模様なのです。この日のアーティストはもちろんですが、カプースチン人気も世間的にはかなり上がってきているのではないかと思いました。カプースチン普及においては、日本の演奏家たちが今でも大きな役割を果たしていると言えるでしょう。

ピアノを勉強している人がいつかカプースチンに興味を持つのは時間の問題だとも思うのですが、これまでにもカプースチンを弾きたい、学びたい!という目的で私のところに来る生徒さんもいました。代表的なところでは、先日ブログでも紹介した紀平凱成君なども最初の出会いがそうでした。あるいは海外のマスタークラスなどでも私がカプースチンに詳しいらしいということで、カプースチンの曲を見てほしいと遠くから参加してきた外国の生徒さんがいる反面、私のことをそれほど知らずまったく偶然にレッスンにカプースチンを持って来る海外の学生もいました。

それとは反対に、これは日本での話ですが、私のクラスの生徒でもカプースチンなどまったく1曲も触らず、おそらくカプースチンのことなどまったく考えることもなく(笑)7年間学んで卒業していく生徒さんもたくさんいます。大学の実技試験ではもちろんクラシックレパートリーを弾きますから。もちろん試験によってはカプースチンを弾いても良いのですが、あえてそうする学生はたくさんはいません。(我が大学院の入試のエチュード課題ではカプースチンを選曲することができるのですが!)

25年もカプースチンをやってきて、今思えばフランク・デュプレみたいなカプースチンのピアノとオケの作品を全曲CD録音しようとするピアニストが出てきたり、上に紹介した日本の若手ピアニストたちが今や世界の聴衆に感銘を与えるほどのカプースチンのパフォーマンスをしたりするようになった、ということは本当に感慨深いことです。カプースチンを取り巻く動きには今後も目を離さず注目していきたいと思っています。

上にスクロール
Translate »