昨日は日帰りで富山へ。
富山県商工会議所女性連合会からご依頼をいただいて講演をさせていただきました。


さまざまな現場でお仕事をされている方々の前で、しかも企業や組織などでリーダー的な女性の方々、人を育てるような立場にいらっしゃる方が多い中、昨日は「ピアノなし(笑)」という環境でお話をさせていただきました。音楽家、あるいは教育者なのか指導者なのか…、演奏家でなければピアノ指導者という立場での視点がほとんどである私が、はたして昨日はどれだけのことを話せたでしょうか。
昨日聞いてくださった方々とは個人的にお話を交わすことができた人もいましたし、素晴らしい方々と交流できたのは嬉しかったです。とても良い環境の中で講演を終わることができました。
私が「講演」をする場合は、ピアノ演奏を入れる場合と入れない場合の両方があります。どちらの形式でもこれまでさまざまな聴衆の前でお話をする経験はしてきました。ただ、毎回同じ話ばかりはしないようには気をつけているのですが、やはり私がしてきた仕事の大半はピアノに関わるものですので、約30年にわたるピアノの指導から学んだこと、あるいはもちろん皆さんが興味を強く持っているであろうピアニスト辻井伸行を育てたことに関するお話に大きなウェイトが置かれることも多いです。
昨日の講演の最後の最後に、若い人が今後成功していくために大切な観点ということで5点挙げさせていただきました。それはずっと考えていて、具体的には数日前に思い浮かんだものなのですが、音楽家を志している人にとっても大事だと思うのでそれだけここに簡単に書き留めておきたいと思います。
①自己プロデュース力
1つ目は「自己プロデュース力」で、これは自己アピールするとか自分を宣伝するいう意味ではありません。自分の強みというものを見極めて、それを育ててしっかり価値のあるものにしていく、その上で自分をきちんとブランディングしてそれを売っていく、というようなことです。大きな才能であるかどうかに関わらず、やはり自分が得意なこと、あまり自分が苦労せずにできるようなものの中に長所があるはずなので、それを見つけてしっかりと技を磨いて多くの人にとって面白いと思えるようなものを発信していけるようになることが大事です。
②前例のないこともやっていく
2番目は「前例のないこと」をやってみる勇気を持つということです、おそらく天才と言われるような人は「前例のないことをやろう」などということは思わずに自然に新しいものを生み出していると思います。何かに触れて感動した時に、まずそれを真似してみようというスタンスは大切だと思います。自分ができないことができるようになるだけでも大きな進歩ですが、それを積み重ねた後はやはり自分のオリジナリティのようなものを発信していくべきでしょう。前例のないことは最初は人からは理解されないことが多いものですし、多くの人に反対されるような場合もあるかもしれません。でも自分が本当に価値を見出したり、どうしてもやってみたいというようなことに挑戦することも大事だと思います。
③企画力を磨く
3番目は、音楽をやっている人であればコンサートを企画したりイベントを作ったり、あるいは番組を企画したりする発想が大事だと思います。番組というのは今ではもうテレビなどに限らず、Youtubeなどネット上で世界に向けて発信できる媒体がいろいろあるでしょう。発信するコンテンツの中には自分にしかできないことも必ず何か入れていくことで、他のものと差別化することも必要です。独自のアイデアも大事ですし、実行力も大事。また人とのつながり、人との出会いがすごく大事です。ゼロから何かを企画する力というのは、限られたプロのプロデューサーだけではなく、個人においても今後はとても重要になっていくと思います。
④もちろん真剣に勉強し続けること
4番目には「勉強をし続けること」という当たり前のようなことを挙げてみました。というのは、今の時代は知識を自分の中にストックしていなくても、オンラインの環境があれば何でも知識がすぐに得られる時代になっているので、あまり普段から多くの本を読んだりよく勉強して暗記していたり、あるいはすぐ使える知識や教養を持つことが大事だと考えている若者が少ないように思えるからです。例えば音楽を勉強している人であれば、知らない曲を知ろうと思ったら一応すぐにネットにアクセスして聴くことはできます。ただ大事なのは、今この現時点でその曲をすでに聴いたことがあるかどうか、その音楽について詳しく知っているかどうか、という観点です。今知らないということは、やはり自分の中の知識ではないので知的戦力になりません。やはりどこまでも現在進行型で勉強し続けて物事に対する考え方や理解力を上げていくことが大事です。
⑤クリエイティヴィティ(創造力)を働かせる
最後に「創造力」を使うということを挙げてみました。これはよく言っていることでもあるのですが、特にクラシック音楽を学んでいると、音楽を理解・解釈することは得意になっていきますが、創造性という部分では弱くなっていることが多いからです。演奏家ではなく作曲家の人たちはもちろん創造性を働かせているでしょう。あるいはジャズピアニストの感性はかなり創造的ですので、演奏者でもクラシック演奏家とはそこが少し違います。どんな音楽を目指す人もその部分は忘れないでいきたいものです。もちろん音楽に限らずどんな分野でも、人間から出て来る創造力というものは本当に大きな力を持つので、特に今の時代は新しい発想や前例のなかったことを含めて、まったく未知のものを生み出す準備も常にしているのが良いと思います。
以上、上の5点に関してものすごく簡潔にまとめておきました。
ビジネスセミナーでもないのですが、なぜか昨日はそんな話を最後にしたので書き留めておきました。これらは自分自身が今後も大切にしていきたい観点ですし、音楽を学んでいる学生たちにもぜひ考えてみてほしい内容です。
