コンサートの雑感と言っても、昨日自分の本番があったのでその感想と余韻を書こうと思いました。というのは、昨日の夜から朝までずっと自分の弾いたメトネルの『カンパネラ』が頭の中に鳴り響き続けてほぼ一睡もできなかったので…。時々そういうことがあります(笑)。
とは言え、昨日はとりあえず無事に演奏を終えることができてホッとしています。とても楽しい一日でした。懇意にしている友人の一人、赤坂でピアノ教室を主催されている柴裕子さんにピアノ発表会&コンサートへのゲスト演奏で招待されてソロを40分ほど弾かせていただきました。
実は昨日のために私は曲目案を事前に4つほど提出していて、その中から選ばれたのが昨日の演奏プログラムでした。一つ特徴的だったのはメトネルとラフマニノフのところかもしれません。この二人を並べたのは、ラフマニノフを演奏するピアニストは世の中に多いのですが、メトネルは未だにメジャーな作曲家としてプログラムに入れられることが少ない状況があるからです。20世紀前半頃におもに活動していた作曲家で今ではほぼ演奏されなくなった作曲家もいます。メトネルはもちろんそうではありません。でも音大の試験やコンクール、コンサート等でときどきは必ず誰かによって演奏されているものの、頻繁に演奏されてどんどんポピュラーになっていくような作曲家ではないのです。でも完全に忘れられた作曲家というわけでもありません。ピアノ音楽史の中ではかなり重要な位置づけを持つ作曲家ではあるのです。
ラフマニノフは生前ピアニストとして自作曲を演奏することも多かったですが、過去の大作曲家の作品や同時代の作曲家の作品も公の場で演奏していたと言われています。その中にはもちろんメトネルの作品もありました。彼はメトネルを非常に稀有な才能を持つ作曲家として尊敬していたのです。ただ経済的にも名声的にもラフマニノフのほうが恵まれた人生を歩んでいたので、メトネルをさまざまに助けたり支援したりもしました。ラフマニノフはメトネルより7歳ほど年長だったのですが、二人は自作のピアノ協奏曲を献呈し合うなど音楽家として強いつながりのある関係でした。
二人の作風は後期ロマン派のスタイルで音楽は似ている部分もありますが、作品から漂ってくる雰囲気はやはり違うものがあるし、どちらにもそれとわかる個性がはっきりと感じられます。昨日は短いプログラムだったので、二人の作曲家を比べるところまではいかなかったと思いますが、私も久しぶりにメトネルを弾いたことで、音楽ジャンルの好み=自分自身が長く頻繁に演奏してきた作曲家の作品の傾向性というものをあらためて考え直したコンサートにもなりました。
そしてアンコールにはチャイコフスキー=ラフマニノフ編の『ワルツ』(作品40-8)を弾きましたが、それはこの曲をラフマニノフが演奏した録音(ヒストリカル・レコーディング)が残っていて、自分はそれをよく聴いていてそのアレンジを耳コピして弾いていたのを思い出したからです。昨日はそのように少し統一感のある流れとなりました。
サントリーホールでは演奏会のアンコールで演奏された曲をきちんと記録していて、直近の大ホールと小ホールで演奏されたアンコール曲の曲名をホームページで公開しているようです。
昨日は最後にカプースチンも弾きましたが、昨日のホールは実は私が20年ほど前にオール・カプースチン・プログラムのリサイタルを初めて行なった場所でもあり、昨日ふとそれを思い出しました。またさらに遡ると、小学生だった辻井伸行君が初めて単独でリサイタルをしたホールでもあって、昨日は冒頭にその辻井君が作曲した曲も披露したので、そんなふうにいろいろ繋がったのも充実感の一つになりました。多くの皆さんに聴いていただけてとても幸せでした。
昨日は素晴らしいコンサートで演奏の機会を頂けたことに感謝しています。

終演後のサイン会にて