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さまざまなハノン

「ハノン」は、もうピアノの基礎練習の代名詞みたいになってしまいました。
そして、ハノンといっても、必ずしも60曲収められた完訳版のハノン教本のことを指さない場合もあります。

『コンパクト・ハノン』(杉谷昭子・駒澤純 編著)という楽譜を見つけました。昨年刊行されたようで、中・上級向けと書いてあります。この楽譜のコンセプトは、「忙しい現代人には、いくら指を鍛えテクニックを維持したいと思っても、とても全曲を毎日弾く時間などない。そのために、一日30分で弾き終わる程度に、効果的にハノンのエッセンスを凝縮した」ということです。なかなか魅力的な発想です。ハノンを丸ごと1冊通せばたしかに1時間半から2時間はかかりますから、これはなかなか良いかもしれませんね。

目を通してみましたが、曲にはかなり手が加えられているけれども譜読みの容易さはそのままで、順番等もよく考えられているようです。
実際にまだ毎日弾き通した経験がないのでなんとも言えませんが、一つの可能性としてなかなか良いのではないでしょうか。60曲を弾くよりは短時間だし、一定の効果は期待できるのではないかと思います。
できるならば、本当はハノンの60曲をもとに各自が自分用に考えて抜粋したりアレンジして30分プログラムを作るのが良いとは思いますが、そんな手間を避けたいと思う人には大いに役に立つかもしれません。

私はこの楽譜を見て、「30分」という枠内で、違った角度からやはり「ハノンから抽出&アレンジ+ハノンにないもの(例えばショパンのテクニックなど)を付け加える」という構成で新たな練習曲の可能性を考えてみたいと思いました。譜読みが超簡単というのが第一条件です。このコンセプトで1〜2年くらいかけて暖めてみる価値はありそうですね。ハノンの特徴を生かし、しかも近・現代曲に必要な技術まで十分カバーできるものを…。

変ったところでは、『オスカー・ピーターソンのジャズハノン』(ヤマハ刊)という楽譜も出ていますが、これはカプースチンなどを弾くために良いかもしれません。こちらはハノンというよりも、使い方としてはまさにチェルニーの代わりとしてお勧めできそうです。ピアノ学習途上のどこかでこれを軽く1冊やるのも良いでしょう。ジャズの感覚が身につくし、弾いていて飽きないし、譜読みもそれほど難しくない。現代の子供たちには、クラシック以外の多様な音楽に触れる導入として、また気分転換にもなりそうです。

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