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表現力をどのように身につけるか

クラシックのピアノのレッスンでは「楽譜に忠実に」という考え方を非常に大事にするのですが、その一方で「自分をもっと表現しなさい」と言われることもあり、学習者は困ってしまうことがあります。「楽譜に忠実に」なることと「自発的な表現力」をどのように考えたら良いのか。

先生からは、過去の偉大な作曲家の曲を弾くのだから、好き勝手に音を変えたりしてはいけない、とまず教わることでしょう。楽譜を正しく読むことはもちろん大切です。リズム、音の高さと長さ、フレーズ、強弱その他の指示、楽語などを正しく読んで音楽を再現することが求められます。しかし、実は楽譜には書き切れないことというものもたくさんあって、作曲家は苦戦しながら譜面を書いているという事実もあります。だから、楽譜に書いてあることが全部正しくできただけでは良い演奏になるとは限らないのです。ましてや魅力的な演奏にはならないでしょう。楽譜に書けるものと書けないもの、これを考えてみることが必要でしょう。これは作曲家の立場になってみないと分からないことでもあります。

一つやはり言えるのは、作曲の経験をしてみることです。まず簡単なものでも良いから、自分のオリジナル曲を創ってみる。歌でもピアノの曲でも、他の楽器を使ってでも何でも良いでしょう。自発的に何かを生み出そうとすると、頭の使い方がまったく変わります。パソコンで作曲するというのもいいでしょう。作曲家の視点から音楽を見ると、すべてが変わってくることは確かです。

それから、音楽を聴くこと。それもたくさんいろんな種類のものに触れることをお勧めしたいです。今の時代、音源はいくらでも手に入ります。物質的には豊か過ぎるくらいで、逆に音楽を聴く時間がないなどという人もいるかもしれませんが、努力して良い音楽をたくさん聴く時間を見つけることです。これによって、楽器をやっている人は、必ず表現力も身についていくことにつながっていくと思います。
また、名曲と言われるものでも、複数の演奏家で同じ曲を聴いてみることもお勧めします。そして、その中から自分の好きな指揮者や演奏家を発見し、その演奏の何が自分は好きなのか、どんな表現に共感するのかを分析することも大事です。そうしていくうちに、自分の中に表現欲が生まれてきます。最初は、巨匠と言われる人の表現を真似するのも良いでしょう。これは楽器演奏の上達には欠かせません。音楽も言葉と同じように、まずは真似をしなければ身につかない部分があります。子供が親の喋る言葉を聴いて言葉を正しく身につけていくのと同じです。表現欲があっても、その表現法を知らなければ人に伝わらないのです。(つづく)

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