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表現力をどのように身につけるか(2)

ピアノの勉強は一般的に楽譜を使うことが多いので、楽譜から音楽を読みとって表現力を高める方法を考えてみたいと思います。

楽譜には、音の高さやリズム、テンポ、言葉による指示(楽語など)が書いてあります。また、ほかに重要なものとしてはフレーズというものがあります。フレーズには、小さなものから大きなものまであります。これは音楽における単語であり文章ですから、正しく意味を理解して正しく発音しなくては通じない言葉と同じように、間違ったフレーズ感では作曲家の意図が正しく伝わりません。

基本的なことができたならば、あとは表現力ということになります。
ここで重要なことを言いますが、実は「楽譜に忠実に」なりすぎると逆に作曲家の意図が見えなくなってしまうことがあるのです。なぜかと言うと、楽譜には書けないことがたくさんあるからです。曲の本質をきちんとつかんでいさえすれば、表現の幅は本来とても自由で広いものです。その音楽が意図しているところを理解することから始まるのです。

一つの例として、楽譜にrit.(だんだん遅くする)の指示のないところで絶対にテンポを緩めてはいけない、などということはないのです。ここが難しいところですが、例えば、ベートーヴェンは楽譜にかなり詳しく指示を書いていますが、必要な指示がすべて書き込まれているわけではありません。作曲家が必ず守ってほしいと思うことは一応書いてはあるわけですが、楽譜に書いてないけど必要だという音楽表現もあります。
はっきり言えば、実はベートーヴェンのソナタにおいてrit.が書いてない箇所でも、「絶対に遅くしてはいけない」ところと、「遅くしても良い」部分と、「遅くする必要がある!」部分がいくつも存在します。演奏する人は、まず“音楽自体が求めるもの”が何かを知り、その上で個々の細かい表現を考えていくプロセスが大事です。作曲というのは、アイデアとして音楽が降りてくるわけですが、その段階ではアゴーギクやディナーミクなどの表現の部分においては、作曲家はそれほど厳密なものとして考えているわけではないのが普通です。(セリー音楽は別ですが。)

ショパンが自作の曲を演奏する際に、かなり自由にテンポルバートをして弾いていた(しかも毎回違うふうに!)とショパンの弟子たちが語っていますが、その証言の意味をよく考えてみる必要があると思うのです。

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