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カプースチンの楽譜最新情報

カプースチンの楽譜についての話です。

今はもうたくさんの人がカプースチンを演奏するので、楽譜についての問い合わせが多いです。

カプースチンの楽譜は日本の全音楽譜出版社から2004年に『8つの演奏会用エチュード』を含む2点、2005年にさらに2点が出て以来、出版社が次々に変わって、現在はドイツの大手出版社であるショット社が出しています。ピアノ作品、室内楽作品、協奏曲のスコア&パート譜も含め、161あるカプースチンの作品を次々に出版しています。外国版なので値段は少し高めですが、日本国内でも普通に手に入ります。

今では絶版となって手に入りにくくなった日本の全音版やプリズム版の楽譜が、非常に高い値段でネット上に出ていたこともあります。最高25万円以上の値段がついていたものもあって、校訂した私自身が驚いてひっくり返りましたが(笑)、実際少し高くても「買った」という人もいたようです。


ショット社から現在出ているカプースチンの楽譜には私も校正にたずさわっております。2017年5月から私が目を通したカプースチン作品はもう36作品ほどになりました。

ただ、それ以前に出版された作品には私がチェックしていないものももちろんあります。

実は、2017年にドイツのショット本社に私が直接乗り込んだ理由は、すでに出版されていた『8つの演奏会用エチュード』や『24のジャズプレリュード』を日本で偶然目にして驚いたからです。というのは、かなり多くの誤植があって、「いったいカプースチンのこの重要な作品を誰が編集しているのだ!?」と問い正しに行ったという経緯があります(笑)。いや、一介のカプースチンファンとして、やはり作品は後世に正しく伝えていかなければいけないので、できるだけ良いものを出してほしいと思ったからです。聞けば、もちろんショットの編集者が素人だったわけではなく、たまたまその作品の編集時に外部に校正を依頼したということもあったようで、おそらくカプースチン作品にあまり通じていない人も混じっていたのでしょう。「大手でもそういうことがあるのか」と私はいったん驚きましたが、その後入れ替わってカプースチンの編集を担当した人は信頼のおける人だったので安心しました。ただ、「今後の校訂は私がやりましょうか?」と持ち掛けて、それ以来ずっと一緒に仕事をしているわけです。


さて、カプースチンのピアノ・ソナタでは、第1番にあたる『ソナタ・ファンタジー』は、20曲のピアノソナタの中では最も人気のある作品かと思いますが、この作品は私がショット社と出会う2017年5月以前にすでに出版されていて、指番号なしの楽譜でした。私が以前カプースチンと一緒に運指を書き入れて出版した日本版の楽譜を参照していなかったようなのです。その後、私が関わってから第2版として「指番号付き」の楽譜が少し遅れて出版されたので、現在購入する人の楽譜には運指が入っていることと思います。

ただ少し紛らわしいのは、校訂で変更を入れて重版を出す際にも、ショット社はそれを楽譜のどこにも書かないということです。運指者の名前も書きません。そういうルールのようです。それはほかの作曲家の作品でもそうです。例えば、ほかに『ピアノソナタ第9番』なども私が運指番号を入れているのですが、私の名前はどこにも書いてありません。なので、私がカプースチンの校訂をしているということは、まだ世界中の誰も知らない可能性があります。まあ責任を問われないので有難いのかもしれませんが(笑)、ちょっと残念ではありますね。

ショット社から出たカプースチンの楽譜でちゃんと私の名前が入っているものもあって、解説を書いた『ソナティナ』(Sonatina)と『カプースチン ピアノアルバム』(Kapustin Piano Works)には入っています。


さて、ショットから最近出版された一番新しいものは、ヤマハの版が絶版になってから何年間も手に入れることができなかった連弾曲、『シンフォニエッタ』作品49です!

この数年の間、私自身にも世界中からこの曲の楽譜の問い合わせがありましたし、知人のカプースチン弾きたちへもかなり頻繁に問い合わせがあったようです。その曲がついに出版されて日本にも入ってきました。ビッグバンド・ジャズの要素があって、リズミカルで斬新なアイデアに彩られた曲です。ぜひ多くの方々に楽しんでいただきたい作品です。


現在ショット社からカプースチンの楽譜が60点余りも出版されています。ただ、まだ未出版のものもあるので、出版のリクエストがあればぜひご意見をお寄せください。私からショット社へお伝えしたいと思います。リクエストしてから実際に出版されるまで1年ほどかかる場合がありますが、熱いカプースチン・ファンからのご意見は必ず反映したいと思っています。

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