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指はどこまで動くようになるか(1)

ピアノを弾く上で、「指がよく回る」ことは絶対に必要になってきます。もちろん、回りすぎて滑ってしまうのはいけませんが、良い意味で「ちゃんと指が動く」ためにはどうしたら良いのかを考えてみたいと思います。きっと、多くの人は自分の指が思うように動かなくて苦労しているはずだからです。実は、指が動かない理由は、何度も言いますが、「指が弱い」からなのです。強い指を持っていれば、誰でも速く動かすことができるのです。速く的確に動く指を持っていれば、コントロールもよく効くので、自分の思った通りの音が出せるようになります。弱い指では、音が勝手に飛び出したり抜けてしまったりして言うことを聞いてくれません。

この「強い指」を作るために、一定の量の練習時間が必要なわけなのです。小さい頃からピアノを続けている人は、手や指の筋肉がだんだんピアノを弾くのにふさわしくなってくるため有利ではありますが、ハノンなどの意図的な練習曲をまったく使わずに指が理想的に鍛えられるパターンは、次の場合以外にはあり得ないでしょう。すなわち、「無理のない正しい弾き方」ができていて、なおかつ「毎日5~6時間は真剣に練習している」という人です。1日に平均5~6時間も弾いていれば、それだけで筋肉は発達するでしょうから、練習曲は必要のない人もいるかと思います。しかしその場合は、自主的に良い弾き方を常に求めていなければなりません。

ハノンを1冊通すことができるだけの筋肉は、普通にピアノを弾く程度の人にはないはずです。大変なエネルギーが必要だからです。では、それほどの筋肉が必要なのかというと、素晴らしい演奏ができるためにはあった方が良いでしょう。簡単な曲だったらとても音楽的に弾けたけれども、だんだん難しい曲(例えばショパンとか)になってくると、思うように弾けなくなってくるということがあります。難しいパッセージが突然出てきて、どれほど練習しても思うように弾けない。そのフレーズに必要なスピードが出ないし、指のコントロールが全然効かない、ということがあると思います。これは、単純に「指が弱い」ためなのです。そして、もっと難しい曲はもっと弾けないだろうとあきらめてしまいます。これは、自分のテクニックの限界として片づけてしまいますが、実は自分の手(筋肉の発達具合)の限界なのです。そして、これは誰でもちゃんと鍛えれば上達していくのです。

ピアニストやヴァイオリニストは3日も練習を休めばただの人になるとよく言われますが、それはこのことを言っているのです。スポーツのトレーニングと同じで、弾かないとすぐに筋肉が衰えてしまうためで、これはどうしようもないのです。だから、いつ何時もよく動く指を保つためには、毎日の練習が欠かせないのです。そして、この練習を毎日続けているということは、手と腕ももちろん鍛えられていきますが、同時にものすごい体力がついていきます。指揮者の体力ほどではないでしょうが、ピアニストの体力も、普通の生活をしていて得られるレヴェルと比べればかなりすごいはずです。

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