音楽用語には、日本で通用しているものと外国で慣用的に使っているものには差がある場合があります。ほとんどの音楽用語はイタリア語から来ていますが、例えば、同音をつなぐという意味で使われる「タイ」はなぜか英語で、この意味ではこれのみが通用しています。(「レガート」は別の使い方をするので。)
こういう統一されていないさまざまな外国語の音楽用語を分け隔てなく受け入れている日本人は本当に柔軟ですよね。
例えばドイツ語圏では、他の音楽用語が原語のまま通じたとしても、「タイ」は絶対に通じません。それとは逆に、ドイツ語圏でシンコペーションのことを「シンコペ」(“コ”にアクセント)と言うのですが、これは略しているのではなく、フランス語なのです。これは英語のsyncopatedにあたる言葉です。いくつかの用語には、このようにフランス語の単語を借用するのが慣用的なのです。なぜと言われても分かりませんがそうなっています。考えてみれば、日本では「シンコペーション」というからこれも英語ですね。楽語関連ではもう全部がイタリア語だと思っていましたが。
最近、レッスンしていた学生が、偶然「シンコペーション」のことを「シンコペ」と言っていた(ように感じた)のを耳にしたことを思い出しました。「えっ?!」と、日本では通じないはずの「シンコペ」はもう日本の若いピアノ学習者たちも言うのだろうか??と不思議になりました。この言葉は略して言わないのが通例なのです。ひょっとしたら、フランス、又はドイツ語圏に留学経験のある先生方が思わず使ったりしていたのがそのまま普通に流通したのか、それとも、ただ他の言葉でもよくあるように「略している」だけなのか…、その真相は分かりません。
たしかに語尾を省略するというのは、最近の口語の日本語では完全に普通の現象になってしまっています。100%を「100パー」などと言ったりするのはよく耳にしますが、最近気になったのは、先日レッスン中に学生にある質問をした時のことです。
「あれ、ぺダルはそこは踏み替えてないの?」と訊くと、
「いえ、踏みっパーです。」
そういう言い方まで現在はありなのですか。(笑)もちろん「踏みっぱなし」という意味ですよね。いや、ビックリしました。
そういう言葉があるのなら、「シンコペ」が普通になっていたとしても、もう不思議ではないかもしれませんね。