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挑戦するピアニスト

このタイトルで本を著したのは、本職は数学の教師、そして最近ピアニストとしての活動も注目されている金子一朗さん。サブタイトルに「独学の流儀」とあるように、ある意味本当にご自身の努力と工夫でピアニストへの道を同時に切り開いた方です。

私は、彼がまさにその道に入るアクションをかけ始めたあたりで2度ほどお会いする機会があったことが縁で本も最近読みました。なるほど、やはり幼少の頃から類まれな音楽環境にあったということを知って納得がいきました。数学の先生であることから、さすがに数学的で論理的なアプローチでピアノ演奏を考え、練習法についても独自に編み出したその方法を披露しています。和声など楽曲を詳細に分析することで、頭をよく使って曲を自分のものにするというプロセスを通して演奏の質を高めたようです。練習時間の制限が著しい中で、実際あそこまでの演奏ができるということに驚異を感じる人もいるのではないでしょうか。
教員はとても忙しいお仕事だと思いますが、でもそんな両立が可能だということを教えてくれたという意味で、現代のさまざまな職業を持つ人たちの生き方の参考になるような気がしました。

もう一人、私が知り合った若手の異才で内藤晃君というピアニストがいます。彼は中学生の時から私の所へ来るようになりましたが、そのきっかけとなるキーの作曲家はラフマニノフとメトネルです。ラフマニノフを好む仲間たちに囲まれた場で、たしかそこで私がたまたま弾いたメトネルによって新しい出会いがあったのです。
彼は最近2枚目のCD(チャイコフスキー、ヤナーチェクetc.)をリリースしたばかりですが、1枚目のCDは「プリマヴェーラ」(メトネルの曲)と題したCDでした。音楽を感じる感性が強く、まず自分の出したい音があってそこから演奏が生まれるというタイプのピアニストです。だから説得力のある演奏をします。

彼は昨年から、ピティナの「名曲喫茶モンポウ」で連載を始め、独自の視点でいろんな作曲家の名曲や、まだあまり演奏されていない珠玉の作品を取り上げて文章で紹介しています。

彼のリサイタルは来週11月15日(日)に津田ホールで行われます。きっと聴衆をまたうっとりと彼の音楽世界に引っ張っていってくれることでしょう。

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