NHK教育で4月から始まった坂本龍一の「スコラ~音楽の学校」をほぼ毎週録画していますが、やはり知的刺激を受けますね。私も今にしてカプースチンからさまざまなジャンルの音楽に真剣に目を向けるようになりましたが、なぜ自分はクラシック音楽だったのだろう?と考えてしまいます。
ジャズピアニストの山下洋輔は、中学生の時に映画『「ベニー・グッドマン物語」を12回も観た』と番組内でも言っていましたが、やはり黙っていても自然に引かれてしまうものにその人のその後の人生を決めるものがあるのだろうな、とは思います。私も今となってはジャズが大好きですが、そのような機会はなかったように思います。では自分が中学生の時には何をしてたかな?と思うと、やっぱりショパン全集20枚組LPレコードを毎日聴いていたとか、そういうことになるわけです。
それでもジャズがなかったら現代の音楽はどうなっていたのだろうか、と思います。常に最先端の音楽を求めていた歴史がジャズにはあるし、クラシック音楽とは別の道を歩みながら、音楽がこれほど発展するとは最初は誰も予想しなかっただろうと思います。
坂本龍一のこの番組のシリーズが『バッハ』と『ジャズ』と『ドラムス&ベース』という3つのシリーズで組まれたことには深く感じるものがありました。現代はどちらかというとリズムの時代なのですよね。それからジャズから出てきたハーモニーやコードも、一見すると難しい数学のように複雑になっていくばかりで、それを順を追って自分のものにするには長いプロセスが必要なことは誰でも想像できるでしょう。私は、ヴォロドスが弾くピアノ演奏の極致を聴いても感動しますが、この番組を観ている時のほうが自分への知的刺激は大きいように思います。過去の音楽を振り返りながらも、良い刺激のある新しい音楽に触れていると、「現文明はまだまだ発展し続けていくのだな」ということを確信できるような気がするのです。
もちろんクラシック音楽でもカプースチンの現在進行形の作曲活動など見逃せないものもありますが、とにかく頭だけは固くなってはダメだな、と強く思います。カプースチンのピアノ協奏曲では、ドラムセットがオーケストラに含まれていてリズムを刻みます。斬新です。こんなのは従来のピアノ協奏曲ではあり得なかったことです。
クラシック音楽だけに携わっていると、自分にとってはちょっと危ないかもしれないなと感じることがあります。中学・高校時代にはまだあまりにも狭い視野で物事を見ていた気がします。今、そのツケが回ってきているという感じです。だからなんでも早めに好奇心を持って物事に触れておくべきですね。こんなもの自分とは関係ない、とある時思ったとしても、ほとんどのものは将来自分と大いに関係が出てくるものなのですね。