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「できる!」と言い切れる才能

もう一つ、辻井伸行君で紹介したいことは、これも先日のテレビの中でも私が言いましたが、何でも「できる!」と叫ぶあのすごさです。人間、よほど強い精神力がなければ、物事に対して常に明るく前向きには考えられないと思うんです。彼にはなぜあれほどの心の強さがあるのか、その秘密についても紹介しましょう。

これは、成功する人の考え方、物の見方のパターンという話になります。
いつも私は伸行君のことを訊かれた時に、「彼の口からマイナスの発言は聞いたことがない」という表現を使います。本当にそうなのです。これは、簡単なことのようでなかなか真似できるものではありません。「言い訳」や「愚痴」のようなものがまったくないのは当たり前。それどころか、現実的なさまざまな障壁が出てきた時に、それを障壁とも思っていないようなのです。
頭の良い人は、問題が起きた時には現実をよく見据えて問題解決をしようとしたり、すぐに解決できないように見えることには、事実分析をしていろんな方向から解決策を見つけたりするでしょう。そしてそれが普通だと思っていることと思います。でも、冷静に分析しているように見えても、実は「できない理由」ばかり挙げてしまって、結局「その方向では無理だろう」と思って終わってしまうケースが実際には多いと思います。

ところが、成功していく人は、障壁が出てきたら物事が後退したと観るのではなくて、それを解決して着実に一歩進んだ、嬉しいと感じるような思考パターンを持っています。例えば、発明家に数多くの失敗はつきものですが、天才的な発明家はみなそれを失敗だと思わずにそれは「前進」だと言っています。だから、何が起きても停滞も後退もなく、それは前進しているということで、喜びを感じるわけです。

伸行君には周りの物事をすべて良い方向に引っ張っていく才能があります。子供の時から、周りの大人たちが落ち込んでいる時にさえ、一人だけ「大丈夫ですよ」とニコニコ言うようなところがありました。必ずしも物事を深刻に分析して考え、そして解決策を見つけ出しているわけではないのでしょうが、なぜか事態はいつも解決の方向に進んでしまうのです。

本当に彼はいつも挑戦の連続でしたが、ヴァン・クライバーンコンクールだって、考えてみたら大きなハンディを持ってあんな難しいコンクールに挑戦するなんて常識的に見たら前例がないので皆が反対するでしょう。本人も「やっぱり無理か」と思ったらそこまでです。そしていつでもやめることもできます。でも最後まで自分を信じることができる強さを持っているのが彼のすごいところです。

そのような精神的な強さは学ばなくてはいけません。
私は人間としての彼から学ぶことがとても多かった気がします。彼を長く観察してきたことで、私はピアノ教育に関する学びも非常に大きいものがありましたが、それ以上にいろいろなことがあったことに気がつきます。

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