カプースチンの作品は、もう世界のどこかで毎日誰かによって演奏されているというほど普及しているようです。たった10年余りでここまでメジャーになったという意味では、かなり特異な地位を築いた現代作曲家と言えそうです。
カプースチンの作品の演奏は、今や動画や音源で数限りなくアクセスすることができます。演奏者もその演奏内容もさまざまです。誰でも楽しめる音楽ですが、演奏する側から見れば、良い演奏をしようと思ったらそれなりに高度な技術が必要だし、音楽的センスも重要です。楽譜を読めば演奏はできますが、その作品一つ一つの本質や魅力を余すところなく伝えるという意味では、成功しているものとあまり上手くいっていないような演奏もたくさんあるような気がします。同じ曲でも違う演奏者が演奏するとまったく違った印象を受けることもあります。
カプースチンのピアノ曲についてはすでにかなり知られているけれども、室内楽作品の本当の価値はまだ知られていないように思います。演奏の機会は世界中で徐々に増えてはきていますが、まだ作品自体があまり知られていないし、聴く側にとっても、新しい音楽に触れられるという意味合い以上のものは実現していないように思います。
それで私は今年から来年にかけて、これまでに作曲されたカプースチンの室内楽の本当の価値を多くの人に上手く伝えていきたいと思って現在準備を進めています。まだ、私自身もCDでは「室内楽作品集No.1」を出しているだけですし、いよいよ次の仕事にかからなければいけないと思います。今年は良いメンバーにも恵まれる見通しが立ったので、カプースチンの室内楽作品を大量に紹介していきたいと思います。
昨日たまたま大学でカプースチンの「シンフォニエッタ」Op.49(連弾)のレッスンをした時に彼ら二人にも話したのですが、ピアノ曲でも管楽器のアンサンブルからイメージすると音楽がガラリと変わるということを知ってほしいと思い、サックス四重奏の演奏を聴いてみたら良いよと言いました。
私が言っていたのはYoutubeで見られる映像ですので、下にURLを紹介しておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=tSoOF6PD9UI
これはピアノソロのための「24のプレリュード」Op.53の第24番と第10番のアレンジですが、はっきり言ってスゴイですよね。ピアノ曲のイメージが、こんなにもエキサイティングなものに変わるということがわかるし、ジャズの演奏家にも時おり感じますが、クラシック演奏家のようなビートの数え方をしていません。それでこれだけ合わせることができるというのはある種のショックです。この演奏はかなりの腕前のほうだと思いますが、それでもアメリカのこのFischoff室内楽コンクールでは銀賞だったということです。つまり金賞グループが他にあったということ。若手演奏家でも、世界の室内楽コンクールのレベルは相当に高いことが分かります。
とにかく、カプースチン作品にはこのようにピアノ曲がいろんな編成にアレンジされて演奏されるようになりました。もう数えきれないくらいにアレンジものも増えてきました。また、オリジナルの室内楽作品でももっとコンクールでカプースチンが演奏されるようになると良いですね。
ちなみに、カプースチンのかなり新しい作品(例えばOp.150の弦楽四重奏曲など)でも、すでに演奏を一部動画で観ることができるし、世界で多くの演奏家たちが新作であっても同時に取り上げ始めていることが分かります。
私は今年は弦楽器奏者とのコラボも多くなりそうですが、例えばすでにヴァイオリン・ソナタやヴィオラ・ソナタは何度か演奏していますが、チェロとピアノのための曲はたくさんあって、チェロ・ソナタも2曲とも素晴らしい作品ですし、ピアノトリオ(三重奏)の作品は実は3曲も存在しています。まだ未公開の作品(委嘱作品のため)もあります。それらの作品をできるだけクオリティの高い演奏で紹介したいと思っていますし、今年はピアノ五重奏曲Op.89も何度か弾く予定です。
詳しくはこのブログでも告知していきたいと思っています。カプースチンファンの方々には、是非この機会にいろいろご協力ください。カプースチンで何か企画中の人もぜひ一緒にやりましょう。世界中からいつでも連絡をお待ちしています!(と言っても、ここではとりあえず日本語が読める人にしか発信できませんが。笑)