今日放送された「題名のない音楽会」は本当にオール・カプースチンのプログラムでした。伸くん、トークで私のことまで話してくれてありがとう! 「カプースチンを弾く辻井伸行という図」にはひょっとしたら意外性を感じる人もいるかもしれませんが、バリバリのクラシックピアニストである彼にも実は元々ジャズマンの特性もあったのです。ちょっとした作曲や即興演奏は小さい頃から得意でしたし、いつかの海外公演時のテレビのドキュメンタリー番組などでも、彼がジャズセッションに入って弾いているシーンがあったと思います。
彼がカプースチンを初めて弾いたのは、確か中2の時だったと思います。今日の番組でも演奏していたエチュード第2番『夢』が最初に取り組んだカプースチンだったと思いますが、いきなり最初からテレビ番組の生放送で演奏したのでした。それから遡ること2年半くらい、彼の家に私がレッスンに行った際にカプースチンの自作自演のCDを一緒に聴いたというのをはっきり覚えています。私もその時に第1番『プレリュード』の音源を聴いて打ちのめされたのです。そのCDを辻井君の家で聴いて、自分もCDを同日に買い求め、それから私の長いカプースチン遍歴が始まったという訳です。実はそれよりも前にマルク=アンドレ・アムランが来日して、カプースチンのピアノソナタ第2番やエチュードを何曲か弾くシーンに私は居合わせていたはずなのですが、辻井君と一緒にCDを聴いた時のインパクトのほうが今では強く思い出されます。
とにかく、私が辻井君にカプースチンを無理やり弾かせたわけではなく(笑)、私たちはほぼ同時にカプースチンを知り(22年半ほど前です!)、自然な成り行きで彼も「弾きたい!」という気持ちが強くなったのでした。ちょうど私が楽譜を持っていたということもあり、やがてエチュード『夢』の演奏の実現に至ったということです。今でもはっきり覚えていますが、彼はそれを弾けるようになるまでに、他のクラシック曲を譜読みするのと同じくらいの日数しかかからず、しかも初めて触れるジャズ風の超絶技巧を楽しんでいる様子でした。そしてテレビの生放送ですから、その時の一発撮りそのままの演奏が全国に放映されました。私はスタジオに入って聴いていましたが、その演奏のクオリティの高さに正直驚きました。おそらく今でもその映像がYoutubeかどこかに残っているはずです。
もちろんカプースチンの作品はほかにも山ほどあるのですが、導入としてはやはり今でもこの『8つのエチュード』が自然でしょうね。それにしても、よくまあ番組でエチュードを5曲も弾かせてもらいましたね。カプースチンという作曲家をまだ知らなかった人にもきっと大きなインパクトを与えたのではないでしょうか。
話は変わりますが、数日前から予告しているところの「カプースチン祭り2023」ですが、正式な情報解禁は今のところ2月15日頃の予定です。もうしばらくお待ちください!