この一連の国内ツアーは、先週16日・17日2日間の紀尾井ホールが一つの山場だったので、私もそちらには行ってきました。というのも、この日はリハーサルも含めてのレコーディング・セッションがあり、これまで辻井伸行の録音を多数手がけてきたフリーデマン・エンゲルブレヒト氏が今回のためにドイツから来ていたからです。彼にお会いできたのは大きかったです。私としても、これまでテルデックスで録音した辻井君の演奏は全部聴かせていただいていましたが、そのプロデューサー氏にようやく直接にお目にかかれました。
フリーデマンさんは、すでにこれまでの仕事で辻井君の特質(その個性や演奏)についてかなり深く認識しており、レコーディング時は彼に的確で良い指示を出していたと感じました。本当に素晴らしい!ただ、ソナタの各楽章にけっこう繊細で細かい要求をしていたことはしていたので、夜に本番を控えている彼にとっては少し酷だったのではないかとは思いました。でも、本人はいたって大丈夫なようだったし、フリーデマンさんは経験豊富でアーティストのことをとてもよく分かっているのでまあ安心して見ていました。
そして録音が一段落すると、すぐに私のほうに振り返り、長年私に訊きたいと思っていたらしいことをたくさん質問し始めました。その内容があまりにも愛情溢れているというか、辻井君に対しての理解が深く、そして二人は気がつくとお互い熱く語っていて、1時間以上も喋っていました。あー、楽しかった。これほど話が深いところまで通じる人はあまりいなかったので、純粋に驚いたし、心から嬉しかったです。初対面でこれほど意気投合するなんて…。同じことは、エイベックス・クラシックスの辻井君のマネージャーの浅野さんにも感じますが、非常に親身になって考えている人たちで、しかも仕事はプロフェッショナルなのですから本当に素晴らしいと思います。
結局その日は夜まで楽しく話し込んでしまいました。
ちなみに、リハーサル時のセッションも素晴らしかったですが、夜のリサイタルでも辻井君は素晴らしい演奏を聴かせてくれました!