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カプースチンからの手紙[第8回]

[2005年4月18日]
「親愛なるマサヒロ!
私の左目は文字を読むのはまだ無理です。これがちゃんと見えるようになったら、右目も手術することに同意しようと思っているのだが。どちらにせよ私は6月にはダーチャへ行くよ。そこで新しいピアノ・トリオ(クラシックの様式)のためのいくつかの楽章を書いてしまわなければいけないのだ。これはニューヨークに住む三姉妹(Ah-Trio)からの委嘱で書くものだ。

・・・中略・・・

目は悪いけど、耳はまだ良いんだから、早くあなたのCDのマスター音源を聴かせてくれ!

・・・後略・・・」

このメールの3週間ほど前にカプースチンは左目の白内障の手術を受けて、手術は無事に成功したのですがまだこの時期はあまり良く文字が読めないということでした。この時期は楽譜の校正をずっとメールでやり取りしていたのですが、こんなふうにメールの話の中に挟むように、自分の身の回りにその時起こっていた日常について私に何でも書いてくれました。

目を酷使して文字を見たり書いたりするのが億劫になってしまう状況なのに、この文章の後には私が質問しておいた内容に丁寧に長~い文章を書いてくれました。この回ではジャズとの最初出会いについてあらためて私が詳しく教えてほしいとお願いしていたので、昔のことを思い出すのも面倒だったかと思いますが、それにもかかわらずカプースチンはすごく(私たちにとって)貴重な情報をたくさん書いてくれました。それらの内容は私が本の中で何度も紹介してきたものと重複するのでここでは省略させていただきます。どちらにしてもあまりにも長いので全文を載せることはできないでしょうが。

あとは、私がこのメールの数週間前にCD録音したオール・カプースチン2枚分のマスターテープを早く聴きたい!とメールのたびにせがまれました(笑)。全音から出る楽譜とタイアップした曲目で、同時にCDもリリースしようという企画でした。カプースチン本人が私の演奏にそれほど興味を持ってくれるのも嬉しいのですが、通常そんなに早くマスター音源は出来上がらないので、実はこのあと数ヶ月間にわたって毎回メールで催促されることになります。結局私にこんなにも強くお願いしてきたカプースチンを8月まで待たせてしまうのですが、本当に首を長くして待っていてくれて申し訳なかったと思っています。(でもその間、彼が機嫌を損ねることはなかったと思います。)
ちなみに、CD編集の仕方はカプースチン自身のロシアでの録音のやり方では、テキパキとどんどん編集していく感じでやっていたのを見ていたので、あのノリだと確かに1~2週間で出来上がってもおかしくないと思われたのでしょう。どうして私がそんなに何ヶ月も音源を出し惜しむのか、ほとんど訝るほどに「なぜCDを送ってこないのか」を追求してきました。やはり作曲家は自分の曲を他の演奏家がどんなふうに弾くのか、ものすごく興味があるのだと思います。しかも当時はまだそれほど多くの人が彼の作品を弾いてなかったわけですし、私が録音した中には世界初録音の作品もあったので、ひょっとしたら「心配」されていたのかもしれないとも思います。(苦笑)


話は変わりますが、今ヤマハ池袋店さんでタイムリーに「カプースチンフェア」をやっていました!


早速「カプースチン祭り2024」のチラシも置いていただきました。

そして本日、「カプースチン祭り2024」第2部、第3部チケットが発売になります!
チケット取り扱いは以下です。
→イープラスチケット予約
→カプースチン協会

第3部は指定席です。第2部・第3部「通し券」は少し割引がききますが、通し券の販売はカプースチン協会(もしくは私へ直接)にお申し込みください!

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