ここのところブログの話題がなぜかコンクールのことに集中しています。
前回のブログはもう1か月前のことになってしまいました。その時期はポーランドでショパン国際コンクールも無事に終わって、世界のコロナ蔓延も少し大人しくなって収まる方向に進むかと思われた時期でもありましたが、その後また猛威を振るって今(12月上旬)もヨーロッパは感染者数が多くて大変な状況が続いているようです。また世界の行く末が少しわからなくなってきてしまいました。
このブログではかなり久しぶりとなりますが、作曲家ニコライ・メトネルを取り上げて新着ニュースを2件ほど。
一つめは、ドイツで「メトネル国際ピアノコンクール(オンライン)」(第1回)が行われるというお知らせです。参加者は来年の5月までに予選、その1か月後くらいに本選の動画を送る形で、それぞれ15分、40~50分のメトネル作品を含むプログラムを準備します。賞金もありますし、演奏会への出演もあるようです。
今年はメトネル没後70年になりますが、ピアノのレパートリーとしてメトネルが爆発的に流行るような現象はこれまでまだ見られていませんが、90年代より長い期間を経てずっと弾かれている作曲家ではあります。ラフマニノフとの強い関係性が語られることもあるし、ロシア近代のコンポーザー=ピアニストの文脈で語られることもある作曲家です。ロシアのピアノ音楽史の中ではとても重要な作曲家の一人だと思うのですが、ようやくピアノ学習者や研究者たちにも普通に語られ、演奏もされるようにはなってきたと感じています。
メトネル作品に親しんでいる人は、このメトネルコンクールは打ってつけではないでしょうか。メトネルの小品を1曲、他にソナタなど少し大きめの曲を1曲準備できれば、あとは通常のレパートリーを混ぜて挑戦できそうです。ほかに課題曲で特記することがあるとすれば、1880年から1930年の間の作品に少しスポットを当てていることでしょうか。メトネルが生きた時代や雰囲気を反映するような音楽が、きっとこのコンクールではたくさん聴かれることでしょう。
オンラインであるということだけは残念ですが、逆に世界中から挑戦できるコンクールですので、ぜひ興味のある人は要項に目を通してみると良いでしょう。サイトも案内しておきます。
→メトネル国際ピアノコンクールのサイト
このサイトで英語の要項もダウンロードできます。
もう一つは、これまたメトネルに関しては記念すべき重要な出版物が出ました。
ドイツのWendelin BitzanとChristoph Flammの両氏が編纂した、12人の研究者たちによるメトネルの生涯と作品について英語で書かれた書物です。Christoph Flammは1995年にはメトネルの分厚い研究書をいち早く出版した人の一人ですし、Wendelin Bitzanも研究者としてはもっと若手ですがメトネルに関する論文をすでにドイツ語や英語でいくつも書き上げている人です。この本を執筆した12人はアメリカ、イギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、ウクライナの研究者たちです。
この本の情報も出版社のサイトをお知らせしておきます。
→Olms(出版社)のサイト
メトネルの本はこれまで日本語で読める文献もかなり限られたものでしたが、英語のものもそれほど多くはなかったと思いますから、この本はとても貴重ですし、本当に素晴らしい仕事をしてくださったと思います。私も早く読みたいと思っています。