前回のカプースチンのメールからの続きです。
ダーチャから自宅に戻って来たあたりを見計らって書いておいた私のメールの質問に、彼からの返信が送られてきました。ちょうど1ヶ月余り経っていましたが、きちんと46個の質問すべてに丁寧に答えてくれました。
以下はそのメールの続きです。
[2004年8月15日]

「~前文省略(質問に対しての回答など)~
T氏が”60年代ヒット曲”のパラフレーズを作曲してほしいと提案してきたんだ。それはトランペットのケニー・ドーハム作の”ブルー・ボッサ”だ。実はもう書き上げていて、しかも暗譜で弾けるくらいになった。ほかには特に新しいニュースはないな。
それとNさんが電話してきて、8月末までに私の演奏シーンの動画を撮りたいのでその準備をしてほしいと言ってきた。20分の小さなプログラムを弾かなければならないようだ。そんなことできるのだろうか、私にはまったくもう時間がない。もう少し早く知っておけばダーチャで”ブルーボッサ”など練習せずに、その録画に必要な曲を練習できたのに…。
ではごきげんよう。
N. カプースチン」
カプースチンはよくメールの後半で、このように世間話のように最近のことを教えてくれるのですが、今思えばいろいろ面白いことを私に伝えてくれています。
ここでは本名を出さずに引用しましたが、上に登場する二人はなんとどちらも日本人です。初期からのカプースチンファンを自称する人なら名前を知っているかもしれません。私の著書にも少し書きましたが、実はカプースチンが最初に世界に知られたのは(私を含めて?)意外に多くの日本人が関わっているのです。『ブルーボッサによるパラフレーズ 作品123』はちょうどこの2004年頃に書かれたのでしたね。しかもダーチャで仕上げた作品だったとは。でもなぜ暗譜するほどそんなに熱心に練習したのだろうか??(笑)
同じメールに、CDプロモーション用の録画を撮りたいと言われたという話もあって、日数を計算すると2週間ほどしかなさそうなわけですが、カプースチンはその後きちんと要望どおりに演奏を準備して録画がなされました。カプースチン本人にとっては不本意な条件でなされた演奏でしたが、今となってはカプースチン本人が自作のソロを生々しく演奏しているほぼ唯一の動画なのでけっこう貴重です。CD『カプースチン ラスト・レコーディング』が発売された後に公開されたこの映像ですが、今ではおそらくYoutubeでその一部を観ることができると思います。