あっという間に1ヶ月もブログを更新しない日々が続いていました。
もちろん大学の仕事はいつものように忙しく、学生たちの活躍もいろんな方面で目覚ましく、なかなか刺激のある毎日を送っています。
今日は自宅で長いレッスンをしたあとホッと一息ついてYoutubeを観ていたら、藤井風さんがロサンゼルスで行ったばかりのライブがほぼ全編(?)アップされている動画を見つけてしまい、しばらくそれに釘付けになってしまいました。この動画、これほど無防備に公開されて良いのかどうかは気になりますが、そんなことが起こってしまうのも藤井風さんなどに特有の現象のような気がします。それにしても彼のパフォーマンスはいつも驚きの連続です。ステージにたった1台のピアノ。そしてマイクだけ。それだけでアメリカの聴衆とファンたちをあれほど沸かせるとは。
あれだけ多くの名曲を生み出し、そして自ら弾くピアノで歌い、音楽の魅力をあれほど引き出す力はすごいです。同じ曲でも毎回必ずどこかを変えてくるし、新しい音楽的要素を必ず付け加える。それはおそらく自分自身への挑戦であるのかもしれませんがファンたちを飽きさせることがありません。もちろん遊び心も旺盛ですが、どんな実験もそれなりの価値のある形にしてしまうのがすごいところです。実は私も彼のライブはこれまで2回ほど行ったことがあり(笑)あれこれ見たり聴いたりしてきましたが、これまで同じ演奏は一度だってなかったように思います。本物の風ファンほどではないにせよ、私でも彼は観るたびにものすごい進化を遂げているのがわかります。往年のジャズミュージシャンたちがお互いに感化されてどんどん進化していった、というのを一人でやってしまっているような…。
これまでも自作曲へのイントロのアイデアとその完成度、それをピアノで弾く際のアレンジの自由さ、彼は同じメロディでもコードを自在に変えて歌いますし、そのメロディ自体も自由に思うがまま。曲の長さもテンポも、時には拍子までも自由自在で、そこまでいろんな発想が出てくるのか、というような驚きがあります。よく計画されているはずなのに即興性にも溢れている。ピアノのバッキングの技自体にもこれまで何度も感動することが多かったですが、いつもいろんなところでアイデアが素晴らしいと感じます。
今回のライブでもそれは感じましたが、必ずカバー曲を入れて地元のファンたちの心を掴むのがうまいし、自分の曲ももちろんいつもとは違うアレンジで弾いたりします。予想しないイントロから馴染みの他の曲へつなげるというのはよくありますが、今回のライブでは個人的には『damn』の演奏が意外でした。前の曲が終わって、オリジナルの『調子のっちゃって』のコード進行らしいものをイントロで弾き始めたので、「あれ?最初にこの曲歌ったのに…」と思っていたら、そのまま『damn』が始まり、なんと2回目のバースでもずっと『調子のっちゃって』のコード進行を使って『damn』を歌っていたのです!(私に思い違いがなければですが。)まさかこの二つがピッタリ合うなんて!と感動しました。
そんなふうにいつも驚きと意外性に富むことを何か必ずやってくれるので、藤井風さんのライブは目が離せないし、耳も釘付けになってしまうのです。おそらく風ファンの皆さん方はそれぞれに感動のポイントがあるのでしょう。私はファンの人たちほど詳しくはないですが、とにかくピアノをあんなふうに弾いてくれることが嬉しいし、クラシックももっと自由になれる部分があるのかもしれないな、と思います。クラシックピアニスト(その言葉自体がもうなくなるかもしれませんが)たちも現代に合うように変化してきているようにも思うし、いろんな音楽シーンで起きていることがそれぞれのジャンルでリンクしていくのだろうな、とも思います。私もこれからも古いものを守りながらも新しいものを追い続けていきたいと思っています。